名スカウトが選んだ夏の甲子園で光ったドラフトの逸材
夏の甲子園大会がいよいよ佳境を迎えている。台風10号の影響で15日に予定されていた3回戦の4試合は、今日16日に順延となったが、予定通りに消化されれば、今日明日の戦いでベスト8が出揃うことになる。注目の星稜の奥川恭伸投手が勝ち残っているが、“ドラフト候補不作”と呼ばれる今大会。ここまでの全試合をチェックした上で、かつてヤクルトのスカウト責任者として古田敦也や池山隆寛らを発掘した片岡宏雄さんに気になる“ドラフトの逸材”をリストアップしてもらった。彼らのうち何人が今秋のドラフトで指名されることになるのだろうか。
特A評価の奥川に出てきた安定感
大船渡の佐々木朗希ら“高校ビッグ4”と呼ばれたドラフト候補のうち甲子園にやってきたのは、星稜の奥川一人。今大会は、不作、凶作と評されることが多いが、名スカウトの見方も厳しいものだった。 「将来、誰をプロに?という目線で見るとぱっと名前が出てこない。もし私がスカウトとして甲子園の現場に足を運んでいたのならば、早々と退散を決めているだろう。これは最近の傾向ではあるが、体力もつき、まとまっている選手、上手い選手、鍛えられている選手は多い。すぐに大学、社会人でもレギュラーになれそうな選手も少なくないが、もう出来上がってしまっていて、プロとしての伸びシロや、可能性を感じさせる素材としては物足りない選手ばかりだ。いわゆる特Aと評価する選手は、星稜の奥川一人だろう。とはいえ、可能性を感じた選手がいないわけではなかった」 奥川は1回戦の旭川大戦で3安打9奪三振の完封で153キロをマークし途中登板となった2回戦の立命館宇治では154キロを出した。球数を調整してもらいながら頂点へ向けての階段を上っている。 「春に比べて安定感が増した。高校生だがより即戦力に近い完成型。マー君の高校時代に比べると、やや見劣りはするが、変化球や、体の動きそのものにキレのようなものが出てくれば、彼を超える可能性のある素材であることは間違いない」 片岡さんが投手で奥川の次に評価したのは津田学園の前佑囲斗だ。前評判の150キロ越えのボールは披露できず最速は145キロだったが、初戦の静岡戦では長打を打たれることなく160球を投げて11奪三振完投。2回戦の履正社戦では疲れからか球威に欠けて3回までに6失点して途中交代したが、一塁に退いてから8回に再びマウンドに上がるという驚きの起用法に応えて意地を見せた。 「典型的な荒れ球。リリースポイントがバラバラで制球が定まらなかったが、指にかかったボールのストレート、変化球には威力があった。力感があった。こういうキラっと光る部分を垣間見せたピッチャーこそプロでの伸びシロがあって面白い」 片岡さんが「好きなタイプ」と支持したのが近江の左腕の林優樹。174センチ、64キロと小柄な方だが、強打の東海大相模を相手に9回を投げて6安打6失点しながらも自責は1。「まとまってセンスのいい左腕は一人、ドラフトの下位で抑えておきたい。大型左腕はプロでの成功はなかなか難しいが、対照的に彼のように上背はないが、キレとテンポで勝負していく左腕は使い勝手がある」という。 また表には載せなかったが、「履正社の清水大成も、そういう意味で可能性のある左腕。また2回戦で姿を消したが、習志野の飯塚脩人も140キロ後半のストレートにしっかりとコントロールできるチャンジアップとのコンビネーションは高いレベルにあった。すでに出来上がってしまっている点が不安要素だが、ここからワンランクどうレベルアップしていくかに注目したい」と2人の名前をつけ加えた。