成長が詰まった99球 専大松戸の右横手・深沢 選抜高校野球
第93回選抜高校野球大会は第6日の25日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で1回戦の最後の1試合が行われ、専大松戸(千葉)は2年連続32回目出場の中京大中京(愛知)に敗れ、センバツ初出場初勝利はならなかった。専大松戸の右腕・深沢鳳介投手(3年)は相手打線を3安打に抑えて2失点完投したが、惜敗した。 【専大松戸と中京大中京の熱戦を写真特集で】 力のないゴロが二塁手の前に転がった。四回1死二塁。中京大中京の4番・原を打ち取った場面だ。この1球にエースの成長が詰まっていた。 「相手は外角球を逆方向に飛ばせる力がある。思い切ってインコースを攻めよう」。右横手から長い腕をしならせ、磨いてきた直球を投げ込んだ。球速こそ138キロだったが、右打者の内角にシュート回転して食い込む球筋は数字以上の力がある。後続も打ち取り、原に「打ってはいけないコース」と悔しがらせた。 昨秋までは外角一辺倒の投球だった。だが関東大会準決勝の健大高崎戦で計5回6失点と打ち込まれたことが転機になった。投球の幅を広げようと、冬場は走り込みと筋力トレーニングを徹底し、下半身を強化。直球の威力、制球力が増し、自信を持って内角を突けるようになった。この日は昨秋の最速を6キロ上回る143キロをマークし、最後まで球威も落ちなかった。内角が使えたことで、外の変化球も生きた。 唯一の後悔は、七回に許したランニング本塁打。内角を狙った直球が甘くなった。それでもわずか99球、被安打3の完投。大会屈指の剛腕・畔柳と互角以上に投げ合い、「憧れの舞台で自分の投球はできた。でも試合には勝てなかった」。初めてのセンバツで手応えと悔しさを持ち帰った。【石川裕士】