KK線緑地化計画のモデルはニューヨークにあり? 銀座を通る高架道路のひみつ。【川辺謙一の「道路の雑学」Vol.3】
緑地化のモデルはニューヨークにあり
さて、冒頭で述べた通り、KK線は廃止後に緑地化されます。 東京都都市整備局が公開している「東京高速道路(KK線)再生方針」(2021年3月付)のp20では、「海外の事例」として、パリの「ラ・クレ・ヴェルト・ルネ・デュモン」やニューヨークの「ハイライン」、ソウルの「ソウル路7017」が紹介されています。 このなかで、KK線緑地化のモデルとしてよく紹介されるのが、ニューヨークの「ハイライン」です。たとえば東京都総務局が公開している「知事と区市町村長との意見交換(中央区)」(2019年10月21日付)には、銀座がある中央区の山本泰人区長が、小池百合子都知事と会談し、「(KK線の)上部をニューヨークのハイラインのように、人でにぎわう緑のプロムナードにすることを願っている」と述べたと記されています(カッコ内は筆者追記)。 ニューヨークの「ハイライン」は、全長約2.3kmの線状の公園で、2009年に開園しました。そのすべてが高架橋の上にあるため、地上に降りる階段が8箇所、車いすも利用できるエレベーターが4箇所あります。 KK線とくらべると、全区間が高架橋である点が共通しており、全長も近いです。ただし、KK線は半径が小さい急カーブが2箇所あるのに対して、「ハイライン」はほぼ直線状です。 ここは、もともと貨物列車が走る鉄道の高架橋でした。ニューヨークの中心地があるマンハッタン島のハドソン川に面した地域にあり、ここが港湾地区や工業地域として栄えた時代は、多くの貨物が鉄道で輸送されていました。 また、高架橋の沿線には、1890年に建設されたレンガ造りの建物がありました。ここには、かつてナビスコの工場があり、クッキー「オレオ」を製造していました。 その後、トラック輸送が発達すると、鉄道が衰退し、廃止されました。 そこでニューヨーク市は、鉄道が通っていた高架橋の上を緑地化して、同市が管理する公園「ハイライン」にしました。 いっぽう、先ほど紹介したレンガ造りの建物は、1990年代に外観を保ったまま再開発され、「チェルシーマーケット」と呼ばれる複合施設になりました。その一部はレストラン街やショッピングモールになっており、「ハイライン」と直結しています。 「チェルシーマーケット」は、日本の「横浜赤レンガ倉庫」と似ています。「横浜赤レンガ倉庫」は、横浜港の倉庫を、外観を保ったまま文化・商業施設に改造したものです。その内部の雰囲気は、「チェルシーマーケット」のレストラン街やショッピングモールと似ています。 現在、「ハイライン」と「チェルシーマーケット」は、ニューヨークの観光名所になっており、多くの人が訪れています。このため、都市再生のモデルケースにもなっています。