ウソだろ、「井戸の影」だけからこんな大発見を…?古代人が「地球は丸い」と知っていたワケ
じつは、地球は「回転楕円体」だった
また、アレクサンドリアとシエネは、南北に約900キロメートル離れています。緯度差7.2度に対する距離が900キロメートルであり、円弧の長さは中心角に比例することから、地球の周囲の長さは約4万5000キロメートルと求められます。ただし、アレクサンドリアとシエネは、正確には南北方向に並んでいないため、エラトステネスの計算には誤差がありました。実際には、地球の周囲の長さは約4万キロメートルです。 実際の地球の形は、完全な球形ではなく、北極と南極を通る軸のまわりに楕円を回転させてできる回転楕円体に近い形をしています。この回転楕円体の中心から赤道までの距離(赤道半径)は約6378キロメートル、中心から北極までの距離(極半径)は約6357キロメートルになります。 回転楕円体は球をある方向につぶしたものとみなすこともできます。球に対する回転楕円体のつぶれ度合いを偏平率といいます。偏平率は、回転楕円体の長半径(赤道半径)と短半径(極半径)を用いて表されます。 惑星の形が完全な球形であると、赤道半径と極半径が等しいため、偏平率は0となります。一方、惑星が南北方向につぶれて、極半径が0に近い値になると、偏平率は1に近い値となります。すなわち、偏平率は0に近いほど球形に近く、1に近いほど大きくつぶれた形となります。 地球の偏平率は約0.0034です。地球は完全な球形ではありませんが、球に近い回転楕円体といえます。 ちなみに、太陽系の惑星のうち、偏平率が最も大きいのは土星です。土星の偏平率は約0.0980です。土星は地球よりも南北方向につぶれた形をしているのです。
伊能忠敬が遺した、地学的にも驚異の仕事
物をつり下げた糸のように、重力の方向を示す線を「鉛直線」といいます。地球上のある地点における鉛直線と赤道面のなす角度が緯度です。地球の形が回転楕円体であるため、赤道と両極を除いて、鉛直線は地球の中心を通りません。 地球の周囲の長さを約4万キロメートルとして、これを360で割ると、平均的な緯度差1度あたりの南北方向の距離は約111.1キロメートルと求めることができます。 江戸時代に天体の観測や測量を行った伊能忠敬(1745~1818)は、緯度差1度あたりの南北方向の距離が28.2里であることを、1801年の奥州街道の測量によって明らかにしました。1里の長さは時代によって異なりますが、1里を明治時代以降に定められた約3.93キロメートルとすると、28.2里は約110.8キロメートルになります。 また、緯度差1度あたりの南北方向の距離は、地球の形が完全な球形であれば、どこでも等しくなりますが、地球の形は赤道方向に膨らんでいるため、場所によって異なっています。18世紀にフランス学士院(フランスの学術団体)が、エクアドル(南緯1.5度)とラップランド(スカンジナビア半島北部・北緯66.3度)で緯度差1度あたりの南北方向の距離を測定したところ、エクアドルでは110.6キロメートル、ラップランドでは111.9キロメートルとなりました。 このように、赤道方向に膨らんだ地球では、緯度差1度あたりの南北方向の距離は、高緯度ほど長くなります。