逆境を乗り越え輝いた「ブラックサンダー」、理解されない企業文化からの脱却と市場浸透へのポイント
こんにちは、マーケティングやクリエイティブ制作の仕事をしている明坂真太郎です。
去年、私が「宣伝会議」のコピーライター講座を受講した時の話です。その時の講師は、電通で数多くの有名CMを手掛けた著名なクリエイターの方でした。ある回の講義の終盤に 質問時間があったので、私はこのような質問をしました。 ┌────────── 広告主は広告主で達成したいことがあるし、クリエイターはクリエイターで生み出したいクリエイティブがあり、うまく折り合いをつけることは難しいと考えています。 双方がうまく折り合えることは、クリエイティブ制作においてどのレベルの重要度であると思いますか? また、優れたプロモーションや企画を生み出すことができる広告主にはどのような特徴があると思いますか? └────────── その質問に対して講師の方の回答を端的にまとめると、「よいプロモーションはよい広告主が生み出すもの。そして、クリエイターと広告主のコミュニケーションがよい企画の要である」と仰っていました。ここでいう「よい広告主」を個人的な解釈で分解すると、次のようなことだと思います。 ・自分たちの顧客のことを理解している ・クリエイターのアイデアや意図を汲み取れる ・チャレンジ精神があり、柔軟である
優れたプロモーションや広告を生み出し頻繁に話題になっている企業といえば、個人的には日清食品やマクドナルド、ユニクロ、アース製薬などを想起するところですが、それらの企業が生み出す企画はどんな企業風土、環境から生まれるのでしょうか?
今回はそんな疑問に迫るため、前述した企業に並んで多くのユニークなプロモーションで話題になっているチョコレート菓子「ブラックサンダー」を製造販売している有楽製菓の代表取締役社長 河合辰信さんにインタビューを行い、優れた企画を生み出す組織のポイントについて深堀っていきたいと思います。
各企業のトガったプロモーションたち
まずは、先ほど列挙した企業のユニークなプロモーション事例を少しさらってみましょう。斬新なプロモーションを頻繁に生み出す日清食品とマクドナルドですが、最近は特に新旧さまざまなネットの流行、いわゆるネットミームを取り入れるのが得意です。 流行ったものをパロディすることは、瞬間的に多くの注目を集めやすいメリットがある一方で、スベってしまうと叩かれたり、評判を下げたりするリスクもあります。ミームが使われる文脈や消費している人々の空気感を掴んだうえで、大半の人が「すごい」と思える完成度まで上げることが必要で、さらにはそれを流行が熱いうちに完成へと仕立てるわけです。 YouTubeにて8,321万回再生(2024/02/22時点)されているゆこぴさんの楽曲「強風オールバック」は、多くのクリエイターが替え歌や実写パロディを制作していますが、その文脈をまだ流行りが落ち着く前に「シーフードヌードル」のテレビCMでやっているのには素直に驚きました。 ゆこぴさんのポスト(https://twitter.com/yukopipikku/status/1635959842375610369/) また、過去のミームをリバイバルさせた事例も多く、マクドナルドが昨年行ったポテナゲ(ポテトとナゲットのセット商品)のプロモーションは、2006年にリリースされニコニコ動画でブームなった楽曲「男女」のパロディでした。 マクドナルトのポテナゲ男女のポスト(https://twitter.com/McDonaldsJapan/status/1676848456139145216/) 日清食品の「チキンラーメン」では、日本テレビ系列で放送されていた「エンタの神様」で2006年頃からブレイクしたアクセルホッパーさんのネタにある特徴的なリズムと振り付けを元ネタにパロディを行っています。 チキンラーメン ひよこちゃんのポスト(https://twitter.com/nissin_hiyoko/status/1719519624725926025/) ミームのパロディ、特に歌やダンスのパロディは瞬間1秒で注目を引くインパクトがあり、テレビCMをはじめマスプロモーションや、X(旧:Twitter)のような拡散性のあるSNSと非常に相性がよいと思います。 しかし、世間や顧客の空気を感じ取り、高いクリエイティビティを持ち、アグレッシブなチャレンジ精神を発揮できるチームでないと、ここまで頻繁に生み出していくことは難しいでしょう。当然、クリエイターだけでも広告主だけでもなく、それぞれが重要なポイントをしっかり抑えるようワークしているからこそ生み出せるのだと思います。 パロディでなくとも、ユニークな企画、プロモーションを生み出していくために必要な風土やチームの空気感なのではないでしょうか。