逆境を乗り越え輝いた「ブラックサンダー」、理解されない企業文化からの脱却と市場浸透へのポイント
――キャラクターを狙って作ったわけではなく、世間の空気感にうまく乗っかっていった感じなんですね マーケティング部を私ともう1人で立ち上げた時に、「ブラックサンダーってなんでこんなに愛されているの?」っていうことを研究しました。 もちろん、物質的な価格や味の良さはベースにあるんですが、プラスアルファで、他のお菓子にない異質さというか、枠を少しはみ出していく、そういったキャラクター性、いじりポイントなど話題になるものがいろいろあるなと思ったんです。ブラックサンダーを話題にすることでお客様どうしにコミュニケーションが生まれる、っていうのが1番の大きな強みになる要素だと我々の中で認識して、これをベースにやっていきましょうとなりました。 ――「義理チョコ」ブランディングもその頃からですか チョコレートなのでバレンタインに当たり前に売れるだろうと思っていたら、思いのほか売り上げの山がバレンタイン時期にこない。それを、有楽製菓に入ってから気づきました。 そこで、バレンタインになんかやった方がいいよね、っていうことになりました。でも、ここまで研究してきたブラックサンダーのキャラクターを考えると、本命チョコではないよね、ということであえて義理チョコですよと、堂々と謳いました。女性にとっては値段も安いし、本命だと間違えられることもないので、安心して使える義理チョコです、という方向で考えていきました。
それに、やっぱり義理チョコでももらったら嬉しいし、みんながハッピーになる。こうした立ち位置を作っていこうという方針の中で、「一目で義理とわかるチョコ」っていうコピーを提案してもらって、進めていきました。
――その認識や方針は社内にどう共有したんでしょうか まず、マーケティング部内で共通言語化しました。その後社内にも共有しましたが、「それはそれ」みたいな感じで理解してもらうのは簡単じゃなかったですね。でも諦めずに、我々はこういう理由でこんな取組みをしますよっていうのを何度も積み重ねて発信して、次第に結果が伴ってきたんで、やっとみんなが理解してくれるようになったんです。 ――結果とともに雰囲気を変えていったわけですね そうですね。ものづくりをすごく大事にしている会社なので、 いいものを作ればお客様に買ってもらえるっていう感覚がすごく強い。お客様の認識がこうだからこうしたプロモーションするとか、マーケティングで発信をしていくという考え方があまりなかったんですよね。 例えば、「新宿でこういうイベントやります」と話すと、「それをやったら売り上げに繋がるの?」とすぐに返されてしまいます。当時は私もマーケティングをかじり始めたばっかりだったんで、どうにも答えようがなくて、「お客様にとってのブラックサンダーってこうなんで、こういうイベントをするといいんですよ」っていうのをとにかく話すしかなかった。それでも理解はなかなかしてもらえず、最後には。「とにかくやらせてくれ」って言ってやらせてもらいました。 ――情熱なのか、社長のご子息っていうポジションパワーなのか微妙なところですね 当時まだ全然役職もなかった頃に父が社長だったんですけれど、社長に何度も話をもっていって、「そこまで言うならもうわかった」って、根負けさせるところまでやりました。まだマーケティングをかじり始めたばかりで基本しかわからなかったんで、 論理的な説得すらできず、どちらかというと勘、感情面での訴求でした。