「乳首を切除した」女性の人生。胸に突起物がついているのが「どうしても嫌だな」と感じた
20歳くらいまで「親の愛情が欲しくてたまらなかった」
冒頭でも紹介したように、自らをフックに吊るして自重を支えるセルフサスペンションの成功で知られるさとさん。身体を使ってするパフォーマンスのあり方にも関心を抱く。 「身体にフックを突き刺して、そのまま人体ごと吊し上げるパフォーマンスは、見る人をハラハラさせる最高のショーだと私は思っています。血はたくさん出ますが、観客のさまざまな反応を引き出すことのできるリアルでエキサイティングな見世物なので、病みつきになります」 いまだに両親はさとさんに関心を持っていないという。現在、そんな両親との関係性をどう思うのか。 「思えば20歳くらいまでは、親の愛情が欲しくてたまらなかったですね。どうして自分の方を向いてくれないんだろう、という思いは常に抱えていました。ただ、20歳以降、動物の保護活動をするようになってから、そうした思いは成仏しように思います。今は保護した犬2匹と暮らしています。一時期は、ネズミ80匹、ハムスター10匹以上を保護していました。ネズミは雌雄をわけないと、どんどん増えていくんですよね。1日に2回くらい掃除をしないとにおいも凄くて、そのときは恒常的に睡眠不足でした(笑)。愛情をかけられるのを待つのではなくて、愛情をかける側になってみると、視界が拓けるものですよね」
「こうありたいと思う姿」で生きるのが良い
今後、さとさんは人体改造家としてよりレベルアップを望んでいるという。 「やはり、お客様がなりたい姿、叶えたいパフォーマンスの応援をするというのは、やりがいに繋がりますよね。人間はこうありたいと思う姿で生きるのが良いし、私の技術でそれを手助けできるなら、こんなに嬉しいことはありません」 異形とされ、爪弾きにされた悲しい記憶。両親を求めた手は振り払われ、さとさんのさまざまな感情が“宙ぶらり”になった時期もあった。 だが、さとさんは、世の中を恨む選択を避ける。姿形を変えたい人がいるのなら、力になれますように。そこには、本来の姿もあるべき姿も関係ない。ただ望むままを叶えられる職人に向かって、彼女はひたすら突き進む。 <取材・文/黒島暁生 撮影/石井強(@syashin_life)> 【黒島暁生】 ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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