柏U-18は戴冠に一歩届かず。川崎F U-18はホームラストゲームを彩る意地の白星でいつものグラウンドに「勝利のバラバラ」を響かせる有終の美!
[12.8 プレミアリーグEAST第22節 川崎F U-18 1-0 柏U-18 Ankerフロンタウン生田 Ankerフィールド] 【写真】「えげつない爆美女」「初めて見た」「美人にも程がある」元日本代表GKの妻がピッチ登場 正真正銘の今シーズンラストゲーム。いつもみんなでトレーニングを積み重ねてきた、この思い出深いグラウンドで、相手の優勝を見せ付けられるわけにはいかない。この仲間と、このスタッフと、このサポーターと共有する水色の歓喜を瞼へ焼き付けるために、彼らは最後の90分間を全力で戦い抜いたのだ。 「今年はチームの絆がメチャクチャ深いですし、この最高のメンバーと一緒にできる最後の1試合だったので、もちろん勝つこともそうですけど、楽しんで、噛み締めながら、悔いのないようにやったのが今日の試合でした」(川崎フロンターレU-18・土屋櫂大) 今季最後のホームゲームで、相手の戴冠を阻止する意地のウノゼロ勝利!8日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 EAST第22節で、5位の川崎フロンターレU-18(神奈川)と優勝が懸かる首位の柏レイソルU-18(千葉)が激突した一戦は、前半38分にFW恩田裕太郎(2年)が叩き出したゴールで、川崎F U-18が1-0で勝利。3連勝で今シーズンを締めくくっている。一方の柏U-18は優勝に一歩届かず、3位フィニッシュとなった。 勝ち点で並ぶ横浜FCユースと鹿島アントラーズユースを得失点差で上回り、前節終了時点で首位に立った柏U-18。「やっぱり優勝争いというところで、なかなか経験できないチャンスですし、チーム全体が緊張していたかなと思います」とキャプテンを務めるGK栗栖汰志(3年)が振り返ったように、追われる立場となったアウェイチームは序盤から明らかに動きが硬く、普段は見られないようなイージーミスを連発。チームの特徴でもある積極的なチャレンジも鳴りを潜める。 一方の川崎F U-18はボールこそ動かされながら、右からDF柴田翔太郎(3年)、DF林駿佑(2年)、キャプテンのDF土屋櫂大(3年)、DF関德晴(2年)が並んだ4バックは、縦に入ってきたボールやサイドからの仕掛けにも完璧に対応。チームを率いる長橋康弘監督も「『なんだ、今日は?』っていうぐらいの出来で、いつも最後の試合みたいにやっていればと思いながら(笑)、最終ラインは凄かったと思います」と笑いながら認めるパフォーマンスで、相手にシュートも打たせない。 双方がチャンスを作り切れない中で、この試合最初の決定機を生かしたのはホームチーム。前半37分。MF児玉昌太郎(3年)のクロスを右サイドで拾った柴田は、「かなり相手が縦を切ってくれたので、左足に切り替えて自信を持って蹴れました」というピンポイントの軌道を中央へ。ニアに潜った恩田のヘディングは右スミのゴールネットへ吸い込まれる。「決めてくれて感謝しかないです」という3年生サイドバックのアシストから、2年生ストライカーが大仕事。川崎F U-18が1点をリードして、最初の45分間は終了した。 後半に入っても、大きな試合の構図は変わらない。「みんな緊張して良いプレーができなくて、『ハーフタイムで変われるかな』と思ったんですけど、やっぱりそこまで変わることなく、いつも通りではなさ過ぎましたね」と話したのは柏U-18きってのポリバレントさを誇るMF藤谷温大(3年)。MF戸田晶斗(3年)やFW吉原楓人(3年)にボールが回ると時折スイッチが入り掛けるも、フィニッシュまでは持ち込めない時間が続く。 11分は川崎F U-18。左サイドの高い位置で関がボールを奪い返し、恩田がペナルティエリアへ侵入するも、ここは栗栖が果敢に飛び出してキャッチ。15分も川崎F U-18。左から柴田が蹴ったCKがエリア内で混戦を生み出し、林が枠へ収めたシュートは柏U-18も4枚ブロックで懸命に弾き出したものの、ホームチームが漂わせる“2点目”の雰囲気。 勝利には2点が必要な柏U-18も、15分に2枚替え。FW加茂結斗(1年)とDF佐藤桜久(1年)を投入し、前線にFWワッド・モハメッド・サディキ(3年)と吉原を並べ、ボランチのMF長南開史(中学3年)を右サイドバックにスライドさせる攻撃的な布陣で勝負に出る。 だが、20分のアタックも川崎F U-18。カウンターから運んだ恩田が右へ振り分け、MF知久陽輝(3年)が迎えた決定機は、飛び出した栗栖がビッグセーブで回避。26分も川崎F U-18。関の左ロングスローを柏ディフェンス陣は掻き出し切れず、知久が叩いたシュートは枠を越えたものの、「相手のやりたいことをやらせなかったというところで、かなりリズムがこっちに来たところはありましたね」と長橋監督も言及。時計の針は着々と進んでいく。 39分。ようやく柏U-18に好機到来。1分近くボールを握った流れから、長南、戸田とダイレクトでボールを回し、ワッドがマーカーを巧みに外して放ったシュートは、しかしクロスバーの上へ。「今日は勇気を持たせてあげられなかったというところ、普段できていたことができなかったというところですね」とは藤田優人監督。どうしても1点が奪えない。 3分間のアディショナルタイムが経過すると、タイムアップのホイッスルが生田の空に鳴り響く。「今までやってきたことが今日のピッチで出せたのかなと思いますね。最後に懸ける想いはベンチメンバーも、今日のメンバーに入れなかったベンチ外の選手も含めて強かったですし、そこでレイソルよりも上回ったのかなと思います」(土屋)。柏U-18は他会場の結果により、プレミアリーグEAST優勝には届かず。川崎F U-18が最終節のホームゲームを笑顔で飾る結果となった。 「選手たちは『ここで優勝を決められちゃいけない』という気持ちが相当強かったですし、あとはもう今年最後の試合で、3年生はこれで終わりなので、今週は練習から“最後の1週間”というか、『ラストの木曜日だ』『ラストの金曜日だ』と言っていて(笑)、そのような形で準備していたので、気持ちが入ったゲームになるだろうなという感じはしていました」。長橋監督は笑顔を交えながら、今週のチームの様子を思い出す。 一昨年は昇格初年度でいきなりプレミアEAST制覇。昨年も最終節まで優勝争いを繰り広げたことで、いつしか川崎F U-18は『タイトルを獲らなければいけない』という立ち位置に置かれ、選手たちに大きなプレッシャーがのしかかるようになっていたことは間違いない。指揮官はそんな彼らの想いも十分過ぎるぐらい察知していた。 「まさしく『優勝しなきゃいけないチームだ』というプレッシャーは、彼らは相当気にしていました。だから、何か“違う敵”と戦っているという感じがあったので、『そうじゃない』と。『「勝たなきゃいけないんだ」みたいな想いで身体が動かなくなっちゃうような、寂しい負け方はやめようよ』という話はしたことがありました。彼らには彼らの良さがあって、そんな中で自分たちの力が発揮しやすい空気感、雰囲気みたいなところをどうにか作れないかなというところで、そこに掛けた時間が今年は特に多かったかなという気はしますね」(長橋監督) 後半戦も佳境に差し掛かるタイミングで、優勝の可能性は限りなく低くなり、チームのエネルギーがしぼみかけた時期もあったという。だが、選手たちは本来の戻るべき場所へ立ち返る。このアカデミーで積み上げてきた“自分たちらしさ”を、ピッチの上で披露する。それだけが勝利を引き寄せる術だと信じ、もう一度チーム全員で前を向く。 「まず今日の試合前に話していたのは、『今年やってきたことを出そう』と。『フロンターレのサッカーをここで表現しよう』ということで試合に入ったので、相手どうこうではなくて、自分たちのサッカーができたのかなと思います」。土屋はそう言って胸を張る。最後の3試合で飾った3連勝は、改めてこのチームが最後まで成長を止めなかった何よりの証だろう。 長橋監督はこの試合を最後にチームを卒団する3年生たちへ、こうエールを贈る。「クラブユースの決勝が終わった時に、日本代表の岡田(武史)監督が『勝利の神様は細部に宿る』と言っていた言葉を私は思い出したんですけど、あれはまさしくそういうところで負けたゲームだったんです。やっぱり細かいところまでしっかりこだわる日常を過ごすこと、その習慣を持ってゲームに挑むこと、1年を通して強いチームはそこが徹底されていると思うんですよね。それを改めて感じた1年だったので、この先で苦しい想いをした時には、あの経験に立ち返って、うまく行かない時は日常に何か問題があるんじゃないかと振り返ってほしいなと思いますね」。 「ここ1か月ぐらいで終わりが現実味を帯びてきて、やっぱりみんなが大好きで、スタッフが大好きなので、メチャクチャ寂しいです。やっぱりこのメンバーと、このエンブレムの付いたユニフォームを着て試合できるのは今日が最後で、もう練習にも行くことがないと思うと、寂しくなっちゃいますね」。柴田が3年生の想いを代弁する。だからこそ、負けたくなかった。みんなで笑って終わりたかった。全員が揃ってサポーターの前で歌った『勝利のバラバラ』は、きっといつまで経っても、ずっと、ずっと、忘れない。 (取材・文 土屋雅史)
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