「変わってるふり」では敵わない、同期の「頭のネジ」の飛び具合……デビューから「15年」が経ってもかわらない「絆」
緊張していた、デビュー当時の思い出
──お二人が初めて顔を合わせたのはいつでしたか? 綾崎:電撃小説大賞の授賞式です。デビューしたころからまどさんは様子のおかしいひとでした。 野﨑:やっぱり、初めてのひとと会うときは舐められたらいけないので、最初からかましていかなければと気合いが入っていました。上下関係をはっきりさせないといけない。 綾崎:そんなこと思ってたんですか!? 野﨑:当時はまだ若かったので……。もちろん、僕も緊張はしていました。 綾崎:緊張はしますよね。授賞式の日は受賞者が朝から集合して写真撮影やインタビューに対応するハードなスケジュールで、僕も恐縮してしまって。選考委員奨励賞を同時受賞した菱田愛日さんと会場の隅っこでひっそりしていたのを覚えています。ただ、交流する機会が多かったおかげで同期との仲を深められました。 野﨑:電撃小説大賞は数千作品もの応募があり、受賞者が何人も出ます。受賞者の年齢や書かれているジャンルも幅広いので、まるで『オーシャンズ11』のような個性の強い顔ぶれでした。 綾崎:それこそ菱田さんは当時身なりがギャルそのもので、いよいよ電撃小説大賞にもギャルが……! と先輩方に驚かれていました。受賞せずとも拾い上げによってデビューした仲間も含め、同期の作家は大勢います。学校の同級生のような関係性に近く、十五年経ったいまでも連絡は取り合っていますよ。 ──お二人が電撃小説大賞を受賞されたのは、電撃小説大賞に「メディアワークス文庫賞」が新設されたタイミングでした。新しいレーベルの存在は意識されていたのでしょうか。 野﨑:僕は応募してから存在を知りました。デビュー作が初めて書いた小説で、応募するならいちばん大きな賞だろうと思い電撃小説大賞を選んでいます。 綾崎:まどさんとは正反対で、僕は応募前から強く意識していました。電撃小説大賞には元々応募していたんですが、ライトノベルは僕の作風と違うなと感じて、応募するのをやめていた時期だったんです。電撃文庫が大人向けのレーベルをつくると聞いて、僕が応募するのはここしかないと運命を感じました。明確にメディアワークス文庫賞狙いです。 ──それぞれの受賞作(『[映]アムリタ』、『蒼空時雨』)を読んだときの感想もお聞かせください。 野﨑:ふだん小説を書いているときも恋愛のアイデアは出てこなくて、恋愛小説の才能があるわけでもありません。綾崎さんの作品は少なくとも僕には書けないものだったので、羨ましさもありつつ、違う道を進むことになる気がしていました。 綾崎:僕は受賞した当時、悔しくて仕方なかったんです。いま振り返るとデビューさせていただけただけで十分すぎるほどですが、当時はやっぱりメディアワークス文庫賞がほしかったから。でも、受賞作の『[映]アムリタ』を読んで完全に諦めがつきました。この作品なら受賞も納得だと圧倒されて、まどさんと同期になれたのは誇らしいことではないかとも思うようになりました。 野﨑:たいへんありがたいです。 綾崎:のちにメディアワークス文庫で何作も刊行される、同期の美奈川護さんも同じことを口にしていましたよ。まどさんの『[映]アムリタ』はそれぐらい、衝撃を与えた作品だったんです。