日本の「木」の文化を家具を通して世界へ【ミラノデザインウィーク】
4月、イタリア・ミラノで開催されたインテリアの祭典「ミラノデザインウィーク2024」。市内で1100以上もの展示が行われたなか、日本国産の木材を使うことで、日本の木の文化を世界へ発信したブランドを紹介する 【ミラノデザインウィーク】日本の「木」の家具を世界へ
タイムアンドスタイル 伝統の技術を現代のライフスタイルに
北海道に本社工場を設けるタイムアンドスタイルは家具を始め、照明、テーブルウェアまで手がけるブランドだ。とりわけ家具づくりにおいては、国産材だけを用い、それぞれの樹種の特性に合ったデザインの家具を製造している。 ミラノにすでに3つのショールームを開設し、海外との取引も多い。ミラノデザインウィーク中は、そのショールームで、国産材でできる住空間のスタイリングを提案した。新作では、針葉樹の秋田スギを台にマットレスと組み合わせた、ベッドにも空間にもなる、新しいカテゴリーのモジュール家具をはじめ、アームチェアなどを発表した。 モジュール家具の「Stone Garden」は一畳と半畳サイズの簀の子状にした木材を組み合わせて、空間を広げることができるシステム家具のようなもの。木造建築の木組の構造を取り入れた脚部は強度のある秋田スギの無垢材。簀の子状の台の上に敷くマットレスは京都の老舗布団メーカーと協業した。だから、中にコイルスプリングではなく、布団屋の技術が詰め込まれている。キャメル毛を詰め、寝ても、座っても、布団に身を預けるような心地よさがある。台の上に畳を組み合わせれば、小上がりの空間へと変容する。
スギ材を使った組子のパーティションも、タイムアンドスタイルらしい日本の伝統的な木工技術を駆使しつつ、現代の生活に寄り添うアイテムだ。鎌倉時代に日本建築の建具技術として誕生した組子細工に基づいている。 細く割った木を用いて溝や角度を加え、小さな木片を組み合わせて紋様を作り出すこの技術は、800年以上の歴史を持ち200種類以上の紋様が存在するという。細かい部材は柔らかい針葉樹だからこそできる。オーク(ナラ)やウォールナット(クルミ)といった広葉樹では硬くてこれほど細かくカットできない。針葉樹の特性を引き出したアイテムといえる。 また、組子の紋様を通して光と影を感じようとした古来の日本人の感性は、今グローバルにも響くだろう。