知られざる2兆円企業:アンドゥリル(Anduril)、マイクロソフトや伊藤忠ら注目のワケ
日本の領空も安心? 注目すべき「AIドローン」
現在、自律型AI兵器において、低コストかつ回収可能がトレンドだ。たとえば、アンドゥリルが開発したモジュール式の垂直離着陸型AIドローンの「ロードランナーM」は、潜在的な敵機による危険を察知し、その上で「ネスト」と呼ばれる空調管理された箱から垂直に発射される。 対象が敵対的な航空機であることが判明した場合、AI制御によって、最高速度を音速に近い時速1100キロメートル近くまで上げ、自律的に飛行経路を決定、目的を追尾して自爆迎撃する。一方、「敵機発見」が誤報だった場合、ロードランナーMは発射地点に戻り、次回のミッションに備えるため回収・再利用される。 そんなロードランナーMは類似の無人機と比較して、弾頭ペイロード(搭載)容量が3倍、片道の有効射程距離が10倍、操縦性が3倍だとされる。 だが、ロードランナーMが高速な戦闘機の迎撃に使えるかどうかは未知数だ。とは言え、日本や台湾のような、領空侵犯が相次ぐ地域における空軍等のストレスを軽減できる可能性があると米フォーブス誌は分析する。 こうした経済性に優れたAI兵器を採用することで米軍はコスト削減を狙っており、2024年度には800以上のAIプロジェクトに180億ドル(約2.7兆円)の予算を充てている。 たとえば現在進行中のウクライナやガザにおける戦闘で、AI兵器の利用と改良を促進。米国防総省は進行中の「レプリケーター計画」で10億ドル(約1,500億円)を費やし、敵の位置や状況などを探る無人戦闘ドローンを開発中だ。そのほかにも、米空軍は60億ドル(約9,000億円)をかけてAI制御による1000機の無人戦闘機を開発中である。
政権入りイーロン・マスクが「AI兵器採用」を提言か
アンドゥリルは4月に、最新鋭F-35ステルス戦闘機のパイロットを補助する無人AI協調戦闘機(CCA)「フューリー」の開発を米軍から受注した。まだ実用化されていないものの、以下のコンセプト動画にあるように、数機の無人「フューリー」が編隊僚機となってF-35の操縦士を先導するとともに、AI制御で監視と攻撃に当たる。破壊力の強いAI型自律兵器が有人のF-35を防御するだけでなく、その攻撃ミッションの成功を効率化して助けるという触れ込みだ。 ちなみに、新設の「政府効率化省(別名:ドージ省)」のトップに就任することが決まっているイーロン・マスク氏は、自身が所有するXで11月24日に、ドローンの大群が編隊飛行する動画に対し「いまだにF-35のような有人戦闘機を作っているマヌケもいる」「再利用できるドローンなら、人間のパイロットにかかるあらゆる費用を除いてそれができる」とコメントした。 米軍のドローン利用を奨励するマスク氏は、極めて高価で製造も難しいF-35に代わり、アンドゥリルなどのAI兵器採用を提言する可能性があるだろう。