知られざる2兆円企業:アンドゥリル(Anduril)、マイクロソフトや伊藤忠ら注目のワケ
2025年1月にトランプ次期米政権が誕生することに際し、株式市場が「AI兵器ブーム」の様相を呈している。そうした中、未上場にもかかわらず時価総額140億ドル(約2兆円)の評価を受け、マイクロソフトと提携するなどで、大きな注目を集めている企業がある。それが、遠隔操作AI兵器や戦闘用ゴーグルを開発する米アンドゥリル・インダストリーズ(Anduril Industries)だ。実は、伊藤忠商事らと連携するなど日本とも関係が深い。そこで今回、アンドゥリル・インダストリーズがなぜ注目を集めているのか、その将来性について解説する。 【詳細な図や写真】アンドゥリルの製造工場(出典:アンドゥリル・インダストリーズニュース)
実は「日本とも関係が深い」アンドゥリル
アンドゥリルは、トレイ・スティーブンスCEOが、オキュラスVRの創業者であり「シリコンバレーの異端児」として知られるパルマー・ラッキー氏とともに、2017年に創立された防衛テクノロジーのスタートアップだ。 実は日本とも縁が深く、2023年5月には伊藤忠商事ら日本の商社3社と了解覚書(MOU)に署名した。これを機に、日本の防衛省にアンドゥリルの製品を提供する機会を模索。日本の自衛隊の体制強化などに貢献するとともに、日本をはじめとしたインド太平洋地域の安全保障に寄与する方針を示している。 また7月には、海上自衛隊が同社製品を活用した指揮統制における実証に向けた契約締結を発表している。
トランプ次期大統領と「相性バツグン」
一方、共同創業者であるスティーブン氏とラッキー氏は、ドナルド・トランプ次期大統領の熱心な支持者でもある。実際にラッキー氏は、2016年の大統領選挙でトランプ氏を支持したことをめぐり、当時のフェイスブック(現メタ)に買収されていたオキュラスVRから解雇されたという逸話まである。 また両氏は、同じくトランプ支持者である投資家のピーター・ティール氏と関係が深い。スティーブンス氏については、ティール氏のベンチャーキャピタル企業、ファウンダーズ・ファンドのパートナーだ。加えて、アンドゥリルに投資する人物として、JDバンス次期副大統領も名を連ねる。 そんなトランプ支持者のスティーブン氏は11月14日、トランプ氏とその政権移行チームとともに会談、米軍改革について意見を交わした。トランプ氏は「海外での戦争をやめつつ、米軍に予算を充てて組織や装備を効率化し、米軍を最強にする」ことを公約として掲げており、従来の国防体制の大幅な変革と、兵器の製造・調達における最新手法の導入を狙っている。11月の会談はこの大方針の下で行われた。 そしてアンドゥリルは、イデオロギー面においてもトランプ次期政権と相性が良いと言える。トランプ氏が「米国を再び偉大にする(Make America Great Again)」というスローガンを掲げて大統領に返り咲いた一方、アンドゥリルはラッキー氏によれば、AI型兵器の開発を、「西洋文明を救う」という目的の下に行っている。 イーロン・マスク氏をはじめ、シリコンバレーの「トランプ派」は、次期大統領の選挙活動を物・心の両面で全面的に支援していた。バイデン政権下ですでに米軍に深く食い込み始めていたアンドゥリルは、トランプ氏が返り咲きを果たした今、次期政権の米軍改革の一環であるAI採用に極めて重要な役割を果たすことが予想される。 ここからはアンドゥリルの事業や注目ポイントなどについて深掘りしていこう。