相続対策の定番「毎年110万円の贈与」は時代遅れ…実は〈年間220万円〉まで非課税に?今年からはじまった「生前贈与」の“新常識”【税理士・公認会計士が解説】
毎年110万円までの贈与が非課税であることを知っている人は多いでしょう。では、2024年から贈与税の課税方法が改正されていることはご存じでしょうか? 税理士法人グランサーズの共同代表で税理士・公認会計士の黒瀧泰介氏によると、この改定によって「年間220万円までの贈与を非課税にできる」そうです。その方法を詳しくみていきましょう。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング<司法統計年報家事事件編(令和3年度)>
これまでは「暦年贈与」1択だったが…
――2024年1月から、生前贈与制度が大きく変わったって聞いたんですけど、本当ですか? 黒瀧氏(以下、黒)「はい、大きく変わりました。 そもそも、贈与税の課税方法には ●暦年贈与 ●相続時精算課税制度 の2つの制度があります。 2023年までは「暦年贈与」のほうが使いやすいといわれていたため、相続時精算課税制度を使っている人はほとんどいないという実態がありました。 しかし、今年の1月からは逆に暦年贈与の使い勝手が悪くなり、その一方で相続時精算課税制度が改良され使いやすくなったのです」 ――なるほど! では、これからは相続時精算課税制度をどんどん使っていったほうがいいということですか? 黒「残念ながら、そう言い切ることはできません。『相続時精算課税』にはメリットもある一方で、デメリットや注意点もあります。 したがって、一概におすすめできるわけではありませんが、暦年贈与と相続時精算課税制度をうまく使い分けることによって、年間220万円まで非課税にできるようになったんです」 ――へえ! そうなんですか! 黒「今回は暦年贈与と相続時精算課税の変更点と、年間220万円まで非課税にする方法をみていきましょう」
相続時精算課税が使われてこなかったワケ
黒「2023年までは、贈与税というと基本的には暦年課税で、相続時精算課税はほとんど使われていませんでした」 ――なぜ使われていなかったのでしょうか? 黒「相続時精算課税は暦年贈与にある基礎控除がなく、節税効果が乏しかったためです。 仮に、1億円持っている父から毎年700万円、4年間贈与したあとに相続が発生した場合を例に考えてみましょう。 贈与の累計が特別控除の2,500万円を超えた場合、超えた部分に対して一律で20%の贈与税がかかります。 したがって、700万円×4=2,800万円のうち、2,800万円-2,500万円=300万円が贈与税の対象になり、300万円×20%=60万円の贈与税を支払うことになります。 そして2,500万円は贈与時は非課税ですが、相続税額を計算するときに生前贈与分もまとめて足し戻されるので、1億円に対して相続税が課税される、というわけです。贈与税として支払った60万円については、相続税から控除されます」 ――ということは……節税効果がないじゃないですか! 黒「そうなんです。2023年まで、相続時精算課税制度には年110万円の基礎控除がなく、かつ少額の贈与であっても毎年申告が必要になるため、使い勝手がよくありませんでした。 さらに、2,500万円までの贈与税が非課税になるだけであって、相続時には計算し直さなければならず、対象財産はしっかり課税されるので節税効果が乏しいことから、暦年贈与を選択される人が多かったんです」
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