相続対策の定番「毎年110万円の贈与」は時代遅れ…実は〈年間220万円〉まで非課税に?今年からはじまった「生前贈与」の“新常識”【税理士・公認会計士が解説】
2024年からは、相続時精算課税も「110万円」まで非課税に
黒「しかし、2024年からは、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が設けられました。これにより、相続時精算課税でも年110万円までの贈与であれば非課税で、申告も不要になります。 相続時精算課税で相続税の課税対象として持ち戻されるのは、基礎控除「年間110万円」を控除したあとの残額の合計でOKとなります。 先ほどと同様に、1億円持っている父から年間700万円の贈与を4回受ける場合を考えてみましょう。 この場合、700万円から110万円の基礎控除を引いた590万円が、特別控除の対象になります。トータルでは590万円×4=2,360万円の全額が特別控除の対象となり、贈与税は全額非課税になります。 相続財産は7,200万円+2,360万円=9,560万円で、この金額に相続税が課税されます」 ――基礎控除ができた分、相続財産を減らすことができるようになったってことですね。 黒「はい。年間110万円までの基礎控除の分は、贈与税も相続税もかからない、とても“おいしい制度”になりました。 さらに、相続時精算課税を選んだ場合は、暦年課税の「持ち戻しルール」は当てはまりません。したがって、相続前7年間に贈与があるときは、相続時精算課税制度を選択したほうが結果的に有利になる可能性が高いです。 暦年課税と比べて持ち戻し期間がないので使いやすく、今後は相続時精算課税制度を使ったほうが税金を抑えられるケースが増えそうです」 ――相続時精算課税制度が改正され、基礎控除が新設されることにより、 ●基礎控除年間110万円までは贈与税・相続税ともにかからない ●基礎控除分の申告は不要になる などの利点が出てくるということですね。
基礎控除のいいとこ取り…「年間220万円」非課税にする方法
――2つの制度の違いや今年からの変更点がわかったところで、基礎控除の“いいとこ取り”をする方法を教えてください。 黒「実は、暦年贈与と相続時精算課税制度は、贈与者ごとに選択ができます。 これはつまり、『祖父からは暦年贈与でもらい、父からは相続時精算課税制度でもらう』といった使い分けができるということです。 祖父からは暦年贈与で年間110万円、父からは相続時精算課税制度で年間110万円の贈与をされるとしましょう。すると、どちらも基礎控除内ですので、合計220万円が非課税になります」 ――なるほどなるほど。いままでは基礎控除は暦年贈与の年間110万円だったのに、今年からは倍の年間220万円が非課税になるんですね! ということは、複数人から相続時精算課税制度で贈与を受ければ、110万円×人数分非課税になるということですか!? 黒「残念ながら、それはできません。複数人から相続時精算課税制度を使って贈与を受けた場合には、110万円の基礎控除を、贈与を受けた金額で按分することになっています。 たとえば、同じ相続時精算課税制度で、父から700万円、母から300万円の贈与を受けたとします。その場合は7:3で按分して、父からの贈与のうちの77万円分と、母からの贈与のうちの33万円分が基礎控除として非課税となります」 ――なるほど。基礎控除110万円を按分するんですね。 黒「同様に、暦年贈与についても、贈与する人が何人いたとしても、暦年贈与の基礎控除は合計で110万円です。したがって、何人から贈与を受けても、暦年贈与と相続時精算課税制度の2つの制度を合わせて最大220万円が基礎控除、つまり非課税枠となります」 ――なるほど。非課税になるのは何人でも最大220万円ということですね。
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