草履をルーツに持つ「JOJO Naitou」に込められた履物文化への思いとは?
ー鼻緒と指先の関係で言えば、ビーチサンダルも似たような形ですね。 ビーチサンダルは日本発祥で、戦後の神戸に来たアメリカの技士が日本の履物を見て、ゴムで作った結果、世界中で履かれるようになりました。 ですが、似ているのは形だけで、本質はまったく継承されていません。先ほどお話しした身体構造は考えられていないので、ペタペタした姿勢の悪い歩き方になってしまい、2時間も歩ければ足が疲れてしまうのです。 その国の風土や人々の身体的な特徴などを考慮したものでないかぎり、身体にふさわしい履物とは言えないと考えています。 ー人間の身体や風土、文化には、常日頃から関心を寄せていたのですか。 これは先代からの教えで、身に染み込んだものです。 昔の人は多くを語りません。私の父が「草履や下駄は和装の小物と違うぞ」とよく言っていたのですが、それ以上のことは話してくれませんでした。ここまで言ってわからなければ、そこまでということなのでしょうね。 ただ、この言葉の裏には「あなたならわかるはず」というメッセージが込められていると思っています。これを胸に秘めながら、ここまでやってきました。 ー「JOJO Naitou」の商品の裏には、インドでの経験や身体の構造、先代の教えなど広大な物語が広がっているのですね。 自分で0から新しいものを作ろうとは考えませんでした。この小さな履物である草履は平安時代に誕生したと言われていますが、最初にできたものがもっとも素晴らしい、という持論があります。千利休を超える茶人がいまだ存在しないのと同じです。 履物は大昔からあります。最初に発明されたものがどういうもので、誰がなにを考えていたのか。そこを謙虚に学ぶ姿勢が大切だと思います。
既存の概念をくつがえす
ー「JOJO Naitou」のこだわりを教えてください。 指股3~5mmが要だとお話ししてきましたが、鼻緒がある履物ならどれでもいいのかと問われれば、答えはノーです。 最近の履物は鼻緒が痛いからといってゆるく設計されていたり、奥まで足を入れず前坪を指で挟むようにといったアドバイスを見かけたりしますが、それでは力も入りません。 適切な力が入る前坪の幅を考えるのに、紙粘土で何度もサンプルを作りました。もちろん、具体的なデータがあったわけではありません。20年以上も履物やお客様の足を見てきた自分の記憶と感覚で作り上げたのです。 また、パーツごとに分解できる点も特徴です。鼻緒の調整をマジックテープで調整できたり、巻底のゴムも傷んだら交換したりできます。うちの商品を愛用していただいているお客様のなかには、65年もお付き合いのある方もいます。これぞ、ものづくりの本質だと思いますね。 ー「JOJO Naitou」では、モデルによって天の長さ(サイズ)が変わりますね。 サイズという考え方も靴由来のものだと思ってください。私たちの商品では足のサイズではなく、自分の歩行経験と筋力に合わせて選んでいただきます。 私の場合は、「KAPPO」という足先だけのモデルを愛用しています。筋力と体幹が強い方ほど、小さい足先のものだけのモデルをおすすめします。 逆に、運動不足な方は大きめのものを履いていただきます。履物のサイズ選びの基準が足の大きさではないのは、画期的だと思います。