高知の高校野球、県決勝の野球部員全員観戦指令の賛否
高知県の高校野球連盟は6日、県下の高野連に加盟している34校の野球部員全員に、夏の甲子園出場を決める高知大会の決勝戦を球場で観戦させる方針を発表した。決勝戦は、7月に高知市の県立春野総合運動公園野球場で開催されるが、34校の野球部員、約1200人分の入場料を無料にして外野席で観戦させる。 全国の初の試みで、野球部員のやる気をアップさせ、県内の野球熱を高めて活性化させることが目的だという。高知県は、強豪の明徳義塾高が6年連続で甲子園出場を決めていて、ここ5年の決勝戦はいずれも明徳義塾vs高知高の顔あわせ。県内のチーム格差が広がり競争意識が薄れていると同時に、部員減少の傾向が進んでいる。部員がそろわないため複数校による連合で、県大会に出場しているチームもある。高野連はそれらの状況に危機感を覚え、決勝戦での甲子園出場をかけたレベルの高い熱い試合を見ることが、県内の野球熱を活性化することにつながればと、運営委員会などで討議した末、今回の全員観戦を決定した。 だが、すでに強制観戦の手法に賛否両論が噴出している。 元プロ野球選手から高校野球の監督に転身した第1号で、甲子園出場経験のある元瀬戸内高校野球部監督の後原富さんは、「まったく意味がないことを決めたものだ」と、反対の意見を持つ。 「甲子園出場を決める試合を全員で見たところで何が変わるのか、わからない。そのことが県下の高校野球界を活性化することにつながるとは、とても思えない。そもそも、各学校の指導者が考えて行うこと。高野連が旗をふってやることではないだろう。 それよりも重要なのは、本当に野球を好きになる子供たちを増やすことだろう。野球部に入部して甲子園を目指すなかで、どんどん野球が好きになる環境を作ることが大切だと思うし、高野連が考えなければならない問題。経済的な問題や、サッカーなど他競技に子供たちの目が向いているのならば、その対策を考える必要があるし、もっと重要なのが指導者の育成だと思う。 決勝をみんなで見るなんて、意味のないことをするよりも、今の世代の子供たちにはどんな指導が最適かを考え、野球に対する知識やノウハウをもった指導者を高野連が育成することに手をつけるべきでしょう」