到着から3週間、はやぶさ2の現状(全文1)今までにないサンプル得られる可能性
今、公開されているリュウグウの姿
渡邊:名古屋大学の渡邊です、よろしくお願いします。では7ページ目のところは、ちょうどこれは6月27日にリュウグウに到着したときの管制室の写真です。到着が確認できたということで、みんなで集合写真を撮ったということで、後ろの画像のほうにちょうど到着時のリュウグウの姿が写ってるということがご覧いただけるかと思います。皆さん、このときは非常に喜んだわけですが、これからいよいよ本番ということで、皆さん緊張しつつ、喜んでいるという状況かと思います。 その次のページ、8ページ目を見ていただきますと、これは今、公開されているリュウグウの姿を2つちょっと並べてみまして、右のほうがちょっと古くて6月26日、到着の直前になりますね。左のほうが6月30日で、これは到着後です。もう何回も、皆さんも見られてると思いますが、形が非常に特徴的で、これは菱形のような形に見えますけど、これは立体的に言うと赤道のところが一番太く、帯状に、円形になっていて、そこを上下が円錐型につなぐ、富士山型でつなぐというような形状になっています。この大きさ、地上で見積もったところ、直径が900メートルぐらいというので、今観測されているのもおおむねその程度だということで、正確な大きさは、最終的な値はまたしばらくあとに発表したいと考えております。 表面を見ますとこの赤道のところがちょっと白くなってますね。この中央の帯。これが特徴的で、そこにクレーター、この図で言うとそれぞれの図の真ん中よりちょっと左側のほうに、200メーターを超えるような大きなクレーターが見えているのがお分かりになるかと思います。表面にかなり大きな岩が見えていると思いますが、この岩がかなりたくさんあるというのもわれわれが多少びっくりした、非常に特徴的な様子で、これはおそらくこの天体が、このあと話すように、より大きな天体が破壊されてその破片が集まってできた天体だっていうことを示す有力な証拠の1つじゃないかと、われわれは考えているところです。 ではその次の9ページをお願いします。これは、今度は立体画像になっているので、ちょっとお手元に赤青眼鏡がある方は掛けてご覧になると立体的に浮かび上がって見えてくると思います。これ、今、画像見てもらうと左へ、左へとこれ自転をしているわけです。「はやぶさ2」っていうのは地球と小惑星を結ぶ直線上にホバリングしていて、そこに止まりながら自転している様子を眺めるという形になってます。その距離は、だいたいこれが撮影されたときは20キロメートルぐらい、表面から20キロメーターぐらい離れたところにホバリングしながら、この自転の様子を捉えているということになっています。 まず自転の軸が非常にこの画面で立っている、上下の方向に向いていると。これは、当初われわれがいろいろ探査をして、タッチダウンなどサンプルを採るための活動をする上で、自転軸の向きっていうのは非常に重要なんですが、残念ながら地上の観測ではそれを決めるのは非常に難しくて、いろんな候補は挙がってたんですが、最終的にこれがまっすぐ立っているというのはいろんな意味でやりやすいということで、これは探査にとってプラスの状況だったということです。 またこれ、最初にもうほぼ全体が見えてしまうということで、自転軸が傾いてますと見えない部分ができて、季節がたたないとその様子が分からないという、つまり不十分な情報の下に探査を進めなきゃいけないんですが、この場合は非常に全体の形が分かるので、先ほど申し上げたような半径、直径であるとか体積、ひいては密度、そういった量が早い段階で探査で明らかにでき、それを基にして実際にタッチダウンを計画できるのではないかと考えてます。 もう1つ、この図で特徴的なのは上の極のところに大きな岩が見えてると思います。これは大きさが130メートルぐらいありましていろんな面を持っていると。その辺り、今詳しくいろいろ調べているところですが、いろいろ面白い形が見えてるんですね。そういったことも今後お話しできる機会があるんじゃないかと思っています。 全体に、非常に、ブロックというか岩塊ですね。ボルダーなんていう言い方をしますが、そういったものが散らばっていると。これはちょっと探査にとっては、やはりボルダーがあると探査機着陸するとき危険ですので、うまくそれが少ないところ、ないところを狙って降りなきゃいけないというわけで、これからその辺りを探していくというのが重要な作業になってきます。 そういったことをするためには、実は画像を見ているだけでは駄目で、それから立体的な形を構成する必要があります。もちろん赤青眼鏡で見てるともう立体的に見れているじゃないかと思うかもしれませんが、これを科学的に、精密に、どれくらいの高さがあるか、クレーターがどれくらいの深さがあるか、岩の大きさはどれくらいか、角度、表面がどれくらい傾いているか、そういうことを出さないとタッチダウンができません。 というわけで、その次の10ページのところを見ていただきますと、これまた、くるくる回ってますが、これは実は画像じゃないんですね。これは形状モデルといいまして、先ほどの画像データを多数組み合わせることによって、立体的な3次元での形というのを復元して、それを動かしています。さらにそれをきちんと確認を取りながら作業を進めるために、まったく別の2種類の方法を、会津大学が中心になってやられるものと、神戸大学の研究者の方が中心になってやられるものをつくりまして、これは比較しているものです。 これはまだ現在、最終モデルに向けてさらに精密化を図っている途中段階のものではあるんですが、両者見ていただくとおおむね同じような形をしているっていうことがお分かりになると思う。細かいところを見ると多少違っているのが、今のところまだ不定性で、今後さらに改良を進めていくとおそらく両方のモデルがかなり近い形に、より近い形になっていき、それが真の姿に近づくんであろうと考えてます。これを基にどういうふうにタッチダウンをするとか、そういったことを考えていくということになる非常に重要なもので、今回公開させていただいています。