パセリ油に含まれる不飽和脂肪酸に抗黄色ブドウ球菌作用 京都工繊大など解明
パセリ油に含まれる不飽和脂肪酸のペトロセリン酸(PSA)に、黄色ブドウ球菌の増殖を抑える働きがあることを京都工芸繊維大学などの研究グループが解明した。大型放射光施設「SPring-8」を使い、芋虫のような形をしたPSAの立体構造も明らかにした。既存の黄色ブドウ球菌阻害剤と同じくらいの効果があり、副作用は少ないとみられる。今後、アトピー性皮膚炎の治療薬などへの応用を目指すという。
黄色ブドウ球菌は常在菌だが、異常に繁殖するとアトピー性皮膚炎を引き起こすなど、疾患の引き金になる。とりわけ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は病原性が強く、院内感染の原因となっている。そのため、現在使われている抗菌薬とは違うメカニズムの治療薬の開発が求められていた。
京都工芸繊維大学分子化学系の北所健悟准教授(構造生物学・タンパク質結晶学)らの研究グループは、先行研究で黄色ブドウ球菌の病原因子である酵素リパーゼ(SAL)の立体構造をつかんでいた。SALには逆L字型をしたくぼみがあり、このくぼみにはまる物質が見つかれば、酵素の働きを阻害できるのではないかと考えていた。
そのころ、韓国の研究グループが、パセリ油が黄色ブドウ球菌に効く可能性があるという論文を発表した。北所准教授らは「オリーブ油の不飽和脂肪酸が体に良いとは聞くので、パセリ油も効くかもしれない」と考え、パセリ油の効果とその仕組みを確かめることにした。
まず、大腸菌にSALを大量に作らせ、精製した純度の高いSALから結晶を作った。次に、パセリ油を含む8種類の不飽和脂肪酸やそのエステル化合物とSALとの複合体結晶を作り、二重結合の位置がどこにあればSALに対して効果が出るか試した。
SPring-8で立体構造のパターンを解析したところ、オレイン酸の異性体で二重結合の位置が少し異なるPSAがSALのくぼみにはまることが分かった。より詳しく調べると、PSAの二重結合が、SALのプラス電荷を持つポケット「オキシアニオンホール」にカチッとはまる構造のときだけ、SALを阻害していた。