幼児期の先取り教育は逆効果だった…「小学校4年生で成績は逆転する」衝撃の研究結果と本当に必要な早期教育
■6歳までは「勉強よりも遊びを優先」すべき理由 私は、小学校に上がる前(6歳頃まで)は、先取り教育をするにしてもほどほどに、遊びや能動的な活動を優先して時間を使ったほうがよいと考えています。 それは、「この時期にこそ身に付けたい力」があるからです。主体性や探究心、社会的スキル、他者への思いやりなどです。 なかでも社会的スキルは、何を使って遊ぶか友だちと相談したり、ケンカをしたりしながら育まれるもので、与えられたタスクをこなすだけの学習では育てられない力です。 6歳までは「脳の基礎体力」を育てる時期です。基礎体力ができていないのに、あれもこれも覚えさせ、何時間も勉強させ、さらにその結果を出せと求めるのは無茶というもの。小さいうちから無理に勉強をさせたいがために子供が勉強嫌いになってしまったら、本末転倒です。 子供の成長を植物に例えるなら、親の役割は子供が自ら育つための「よい土壌」を作ってあげること。それが、この「脳の基礎体力」です。 それによりどのような方向にどう育つかは、その子次第。その子が生き生きと育つ良い土壌を作るためには、親はまず「その子の成長のためにはどのような土壌を用意すればよいのか」を知ることが大切なのです。 ---------- ◎「読み書き」は不要…ではない もちろん、読み書きや計算などの勉強も、子供の世界を広げるために必要なものです。私が運営している幼稚園でも、15分ほど机で学ぶ時間を設けています。ただし、この時間は勉強させるというよりも、「学びの窓」を開くための時間。文字が書けるとお友だちや家族に手紙が書けるし、文字が読めると外遊びで見つけた花や昆虫の名前を図鑑で調べられる。そういった学ぶ意欲、学ぶための好奇心を養い、子供の世界を広げるための時間です。 また文字を書くことで、「ファインモータースキル」を鍛えることもできます。ファインモータースキルとは、鉛筆を持つ、はさみを使う、小さい物をつまむ、はしを使うなど、指先の細かい筋肉を動かすための運動能力です。このスキルを鍛えることは、脳の発達にもよいとされています。「ほどほどに」「遊びを優先」しながら取り入れてみてください。 ---------- ■脳の基礎体力をアップさせる方法 では、実際に、幼児期に「脳の基礎体力」を上げるために、周囲の大人や親ができることとは? 具体的な方法を知りたいと思います。 当園の例を挙げると、遊びの時間をバランスよく取り入れるため、「フリーワークタイム」を設けています。「フリーワークタイム」とは、子供が自分の意思で活動に取り組む時間。モンテッソーリ教育に由来するもので、いくつかの日本の幼稚園でも採用されています。 教室内をエリア分けして、それぞれのエリアにワークを設定しています。ごっこ遊びをするソーシャルエリア、ブロック遊びをするクリエイティブエリア、モンテッソーリ教育の教具で指先の筋肉や集中力を鍛えるエリア、お絵描きなどをするアートのエリア、数学や文字をさまざまな形で学ぶラーニングエリア、日本語と英語の本を自由に読めるライブラリー、少し休みたい子がくつろげるソファなど。「フリーワークタイム」では、子供たちが自由にエリアを選んでワークをします。 このような「フリーワークタイム」はご家庭でも設けていただけます。具体的には、子どもが興味を持ったものをセットで用意し、自由に遊ばせるとよいでしょう。例えば、お絵かきに興味がある子どもには、紙やペン、クレヨンなど、お絵かきに関連する一式を揃えてあげるといいかもしれません。 このように、子供が自分で考え、自由に遊ぶ時間をもうけ、次のSMILEを育むことこそが、子供の「脳の基礎体力」を上げることになると考えています。 ---------- S:Social Skills:心からの思いやりをもって人と接し、よりよい関係を築いていける社会性を育みます。 M:Manners:美意識を基に、あいさつや食事など、日常におけるさまざまな生活習慣とマナーを身に付けさせます。 I:Interests:好奇心を大切に、みずから学び、表現し、未来への可能性を広げていく姿勢を育みます。 L:Languages:国際的な感性を養い、多様な文化への理解と言語を修得し、世界の人々と向き合い、理解し合える語学力を育みます。 E:Enthusiasm:自信をもって考え、行動し、その先に出会った疑問や興味に対して、粘り強く追求する意欲と熱意を育みます。 ----------