「米農家さんは本当に減ってるんだな」靴下専門店が奈良での事業拡大で感じた“複雑な気持ち”…15年間で水田が減って増えたのは?
「奈良県で綿花栽培が少しずつですが復活」
水田は減りつつも、奈良県全体として農業の盛り上がりを感じさせる一面も。「奈良県では江戸時代以前の元亀・天正頃(安土桃山時代)から綿花栽培が始まり、18世紀以降衰退し、途絶えてしまっていました。しかし、近年は、弊社の取り組み以外にも、奈良県で少しずつですが綿花栽培が復活してきています」。 ただ、同社の綿花栽培への挑戦は、簡単ではありませんでした。「その育成の半分以上は虫との戦いでした」と振り返ります。 無農薬での栽培にこだわり、害虫から綿花を守るために試行錯誤し、「撃退するより共存へ」という考えに。「綿花を雑草と共生させることで、雑草に害虫を誘導し、綿花が害虫に耐えられるまでに成長するのを待って、草刈を実施しています。利益を出して商業的に生産するのであれば、ここはおとなしく農薬を使うべきですが、私たちは、できるだけこだわって栽培を行いたいため、この手法を取り入れています」 農薬のほか化学肥料や収穫時の枯葉剤も使わずオーガニック農法での栽培を行っているものの、「近隣の畑や田んぼでは農薬が使われているため、オーガニックコットンとは謳っていません」。周囲の農家と折り合いをつけつつ、理想の綿花栽培を追求しているようです。 もともとは「世界最高の靴下をつくりたい」という思いから始まった綿花栽培。広陵町で腰を据えて綿花を育てることで、休耕田の増加に加え、害虫対策といった農業の大変さ、そして、新しい農業の兆しも感じ取っているようです。
「2023年は、ふるさと納税寄付額は約200万円」
綿花栽培が行われている広陵町の地域振興部 農業振興課にも取材しました。 同社の綿花畑増加については、「本町でも有数の靴下事業者であるタビオ奈良株式会社の農業への参入により、一部耕作放棄地の解消ができ、また、中長期的に安定した農業経営が可能となる企業体による担い手確保が実現しました」と、休耕田が活用できる、地域に根付いた取り組みだと考えられているようです。 さらに、靴下の生産量全国1位で「靴下のまち」として知られる広陵町では、同社が農薬などを使わずに生産した「広陵綿」の靴下製品をふるさと納税返礼品に活用。「2023年度は、タビオによる綿花を使用した靴下で、ふるさと納税寄付額は約200万円となっており、町の農業・産業のPR商品として活躍しております」。 綿花畑のほかに、「耕作放棄地や耕作放棄地化が予想される農地は、地域の農業団体が小麦や米粉用米・飼料用米の栽培で活用されることが多いです」とのこと。水稲栽培が行われなくなった土地が荒れてしまわないために試行錯誤していることがうかがえました。 ◇ ◇ 「タビオが育てた綿花を使って、履きやすい靴下なども作っております」とSNS担当「1号」さん。広陵町で育った綿花は「【長場雄×NAIGAI×Tabio】SOCK SUN片手で履けるくつした」や「TABIO’S COTTON」シリーズの靴下や腹巻に使用されています。 (まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・谷町 邦子)
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