「糖尿病のある方が食べてはいけないもの」をご存知ですか? 食事で気をつけるポイントを医師が解説
糖尿病のある方が摂りすぎに気をつけたい栄養素とは
編集部: 具体的にどのくらいが「ちょうど良い量」なのですか? 廣田先生: “糖尿病のある方”と“健康な方”を比べて、栄養素などの「ちょうど良い幅」にどのような違いがあるか、すべてが分かりきっているわけではありません。「ちょうど良い幅」がほぼ変わらない栄養素も多そうなので、一般的な「ちょうど良い幅」とあわせて、糖尿病がある方の特有の注意点について考えていく必要がありそうです。 編集部: なるほど。量が多すぎるとどのような悪影響がありますか? 廣田先生: 例えば、摂るカロリーが多すぎると、肥満になります。糖尿病のある方が肥満になると、糖尿病を悪化させてしまうことがわかっています。糖尿病がない方でも、肥満は健康に悪い影響がありますが、糖尿病のある方はより気をつける必要があります。 編集部: やはり、糖尿病のある方は「炭水化物」の摂取量を減らすべきなのでしょうか? 廣田先生: 糖尿病は、血中の糖の量を調整する能力が落ちてしまう病気です。そう聞くと、糖質や炭水化物を食べる量を減らせば、血糖値を下げることができるように思ってしまいます。しかし、実はそう単純ではありません。炭水化物以外でいわゆるカロリー(エネルギー)のあるものとしては、脂質・たんぱく質などがあります。これらの脂質・たんぱく質も血糖値をあげる効果があります。炭水化物は食べてから、比較的すぐに血糖値があがるのに対して、脂質・たんぱく質は後から上がります。 編集部: 炭水化物を減らしても、脂質・たんぱく質が増えすぎては意味がないということですね。 廣田先生: その通りです。炭水化物を極端に減らしたとしても、脂質・たんぱく質をとれば血糖値があがるし、「炭水化物さえ食べなければセーフ」だと思って脂質・たんぱく質を摂りすぎれば、血糖値はもっと上がってしまいます。このように、お米やパンなどの炭水化物についても、糖尿病のある方もちゃんと食べた方が良いでしょう。まだはっきりしない点もあるものの、糖尿病のある方はカロリーのうち炭水化物が40~60%くらいが良いと言われています。 編集部: その他、注意が必要な食べ物・飲み物があれば教えてください。 廣田先生: 注意が必要なものとして、糖類(お砂糖など)を足した甘い飲みものがあります。糖類が入っているようなジュース、炭酸飲料、エナジードリンクなどは、飲みすぎると糖尿病が悪化する可能性があります。まったく飲んではいけないわけではなく、習慣的に飲んでいる方は飲む機会を減らしたり、飲む量を減らしたりすると良いですね。 編集部: 糖尿病のある方は、具体的にどのような栄養素に気をつければいいのでしょうか? 廣田先生: 「飽和脂肪酸」と「食塩」には注意が必要です。脂質にはいくつか種類があり、そのうちの一つの飽和脂肪酸は、過剰に摂取すると糖尿病を悪化させると言われています。飽和脂肪酸は主に、牛肉や豚肉など動物の肉や、一部の植物由来の油に多く含まれています。日本人全体でも摂りすぎていると言われている栄養素ですね。また、飽和脂肪酸を摂りすぎると、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)も上がりやすくなります。LDLコレステロールが上がりすぎると、血管が硬くなったり、詰まりやすくなったりします。これを「動脈硬化」と呼ぶのですが、糖尿病がある方は、動脈硬化に気をつけた方が良いと言われています。 編集部: 食塩についても教えてください。 廣田先生: 糖尿病の治療の大きな目的の一つは、血管を守ることです。食塩を摂りすぎると、血圧があがりやすくなって、血管を傷つけてしまいます。食塩は日本人全体で摂りすぎていると言われている栄養素なので注意しましょう。食塩が糖尿病そのものを悪くするわけではありませんが、糖尿病治療の目的を考えると、摂る量には気をつけたほうが良いですね。