<静かに進む日本の人材流出>海外移住を決断させる4つの志向性、日本経済のために見つめ直すべきこと
急激な円安になった2022年以降、新聞・テレビ・雑誌・ウェブメディアではこぞって「日本人の海外出稼ぎ」が報じられるようになった。 米国ですし職人になり年収8000万円稼ぐ人、豪州の農場労働者として月収50万円を稼ぐ若者たち――。そんな報道から、海外で働く日本人への注目がにわかに高まった。 昨今、「日本人の若者は内向きだ」という言説が社会に蔓延しているが、必ずしもそうとは言えない。 外務省の「海外在留邦人数調査統計」によれば、23年時点で海外に在住している日本国籍者の数は約129万4000人。20年以降、コロナ禍などの影響で長期滞在者は減少する一方、永住者は増え続け、23年には約57万5000人となり、調査開始以降、最多を記録している。 留学などに関しても同様である。確かに、海外への長期留学者数は減少しており、これが「内向き」の根拠として使われている。背景には、日本人の平均世帯収入が低下した一方、海外の大学の授業料や生活費が大きく高騰し、一般家庭では手が届かなくなったことなどが挙げられる。 だが、コロナ禍を除き短期の海外留学・研修プログラムに参加する学生たちの数は全体的に増加傾向であり、ワーキングホリデー・ビザで海外に渡航する若者たちも増え、大学時代にできなかった留学をそれによって代替する動きもある。 移住研究を専門にしている私は、これまでに各国の日本人移住者、帰国者などにインタビューを行い、海外移住の主な動機などを調査してきた。 特筆すべきは、巷間言われるような「高い給与」を第一の理由とした日本人はほとんどいないことである。海外移住の動機は多種多様だ。移住とは複合的なプロセスであり、社会的・政治的・環境的な要因からなる大きな決断なのである。 ただし、海外移住には様々なリスクもある。このことを念頭に、ここでは、海外移住の「光」と「影」を挙げ、日本人の海外移住という現象を通じて、日本のあり方やより良い日本の将来に向けて必要なことを提示していきたい。
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