<静かに進む日本の人材流出>海外移住を決断させる4つの志向性、日本経済のために見つめ直すべきこと
日本人にも外国人にも魅力ある国づくりが必須
日本はれっきとした先進国であり、現在でも世界第4位の経済大国である。生活の質や経済、文化などの指標にもとづいて米国の大手メディアが発表した「世界のベスト国」ランキングによると、日本は87カ国中、第6位である。世界的に見て、まだまだ住みやすい国であると同時にポテンシャルのある国でもある。 だからこそ、日本人が日本社会の将来を否定的・悲観的に捉え、海外移住をかえって促進させてしまうことは避けるべきだろう。私たちは、海外移住している日本人を「ごく限られた一部の人の動き」だとして静観するのではなく、その要因となっている課題について真剣に向き合い、改善していく必要がある。 現状維持では、将来の日本にとって必要不可欠な〝人材流出〟は防げなくなるのではないか。それは長期的に、日本の経済成長や技術の発展、さらなる少子化の進展など、多方面に影響が及ぶことになる。 また、米国のギャラップ社の調査で、日本は「潜在的な高度人材の純流出国」と位置づけられている。潜在的な可能性とはいえ、日本から海外への永住を希望する日本人大卒者数が、日本への永住を希望する外国人大卒者数を上回っているのである。 今後も日本人の流出が続くことが予想される一方で、海外の人からも日本は選択肢として入らなくなりつつある点は留意すべきだろう。 海外移住者の帰国を促進する政策も必要である。帰国者が増えることは〝人材循環〟にもつながり、日本社会にとって多様性や活力、イノベーションなど様々なメリットをもたらすからだ。 中国では技術者や研究者が海外に永住する「頭脳流出」を防ぐため、優秀な人に対して、奨励補助金の授与など、様々なインセンティブを与え帰国を促進する政策をとっている。日本も、例えばAIやバイオなど、技術革新につながるスキルを持っている人に対して、日本国内で活躍してもらうためのインセンティブや複数国籍を認めることで、海外移住者の帰国を促進することを検討すべきだろう。海外移住者にとって日本が「いつでも帰りたいと思える国」にしていくことが求められる。 日本社会の中に存在するプッシュ要因を取り除く努力をしていくことは、日本人のみならず、外国人にとっても魅力的に映るはずだ。 現在、地方創生の一環として、地域に様々な形で関心を寄せる「関係人口」を増やす取り組みが注目されている。同様に、日本に愛着を持ち、何らかの形で日本と関わっていきたいと感じる外国人の「関係人口」を増やすことは、日本の将来にとって大きなサポートとなるはずだ。 私は近年、日本の地方における外国人の起業について研究しているが、彼らは雇用創出で地方を活性化させるなど、地域のために日本にコミットしていて、日本に貢献して海外との交流の懸け橋ともなっている。何らかの形で日本と関係を持ち、コミットしていけるような外国人を増やしていくことも大切である。 私たちは日本という国を、日本人にとっても外国人にとっても、より生きやすく、より住み続けたいと思える努力をしていかなければならない。日本にはまだ、それを実現する力が十分に残っている。(談)
大石奈々
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