【アメリカから見たTPP(8)】中国はTPPに参加するのか?
米プリンストン大で行われたクリスティーナ・デイビス教授へのインタビュー(Matthew Kolasa撮影)
昨年10月に日米を含む12カ国が合意に達した環太平洋経済連携協定(TPP)には、世界第2位の経済大国、中国が含まれていない。将来、TPPに中国が加入する可能性はあるのだろうか。米プリンストン大学のウッドロー・ウィルソン国際公共政策大学院教授で、日米関係と国際貿易の専門家のクリスティーナ・デイビス教授に聞いた。
TPPは「中国の参加を否定していない」
世界に先駆けて日米を含む12カ国でTPPのルールを作ってしまえば、後から入ってくる参加国に対しては、そのルールを守るように要求できる。つまりアメリカは、TPPのルールを他の11カ国とともに先に作ったことで、世界の貿易体制に対し、最も有力な政治的経済的大国としての影響力を維持することができるようになったのだ。 これは、中国が今後TPPに加入するのか?という疑問につながる。貿易のルールができ上がった後にもかかわらず、中国がTPPに参加する可能性はあるのだろうか。デイビス教授は「TPP合意国は、今後中国がTPPに参加する可能性を否定しているわけではありません」と説明する。 一方で、近年中国は独自の経済協定を模索している。デイビス教授は「中国は、TPPとは別のルールを持つ地域的な協定づくりを主導しています」と解説する。中国は、インドなどTPPに参加していない国々を含む自国主導の大きな地域協定の交渉を進めている。
「中国の参加を見据えてルールを設定した」
中国が将来TPPに参加するというのは、単なる憶測ではない。TPPの主要なメンバー国でさえ、その可能性を考えている。デイビス教授は「日本やアメリカは、中国の参加を歓迎するという声明を発表しています。アメリカ国内政治における議論の多くが『TPPが中国を拘束するのか』や『国有企業に対するルールづくり』に関するものだったのは、極めて興味深いことです」と指摘する。 「TPPに参加しているベトナムは国有企業の割合が高い共産主義国家であり、TPPのルールが(同じく共産主義国家である)中国の国有企業を縛るようになる日が来るかもしれないということは、誰もが分かっていることです。私は、交渉官たちは将来起こりうる中国の参加を見据えて、それゆえに高い参加基準を設けたかったのだと考えています」