夫は「成績が落ちたらお前のせいになる」と言われ…23歳“全盛期”に電撃引退→結婚の女子陸上・寺田明日香が8年後に「母で五輪出場」までの波乱万丈
「寺田の成績が落ちたら、お前のせいになるぞ」
当時はまだ、女子選手の恋愛は「成績が落ちる」「体型が変わる」など偏見が根強い時代。その上、佐藤さんは陸連職員という立場で、好奇の目で見られるのは明らかだった。そうした状況も理解した上で、2人は密かに交際するつもりだったが、ふとしたアクシデントで関係者の知るところとなってしまったのだ。 「周囲には『これで寺田の成績が落ちたら、お前のせいになるぞ』と言われることもありました。彼女にそういうものを背負わせていることが、本当に申し訳なかったなと思います」(佐藤さん) それでも11月に迎えたアジア大会では、脱水症状になりながらも100mハードルで5位、走力を買われて4×100mリレー予選にも出場と、順調に成績を残した。翌年のテグ世界選手権のB標準記録も突破し、出場はほぼ確実と思われた。 しかし、翌2011年3月の沖縄・石垣島合宿で、それまでの好調が暗転する。 トレーニングの一環でフットサルをしていた際、踏み切り脚を捻挫したのだ。回復は芳しくなく、練習もままならない。試合には出続けたが、記録が出せるわけもなく、結果的にテグ行きの切符を逃した。 同じ頃から、摂食障害にも悩まされるようになった。体重が少し増えたら吐いたり、その反動で暴食したり。2週間で体重が5kgも増減するなど、乱高下を繰り返した。 「周囲からは太ったら『彼氏がいるからだ』と言われるし、痩せたら痩せたで練習がこなせなくて怒られる。『じゃあどうすればいいの? 』ということが多すぎて。いつの間にか生理も止まり、食べられなくなり、疲労骨折が増えて……という感じでした」 決して恋愛が原因ではない。ただ、図らずも不調の時期が重なったことで、指導者との関係性に溝が生まれているのも感じ、さらに心身のバランスを崩していった。 ロンドン五輪の代表選手選考会だった2012年の日本選手権は欠場。結局、五輪に出場することは叶わなかった。 「本来なら狙える位置にいたのでかなりショックでした。チームの皆は福島さんの応援にロンドンまで行ったけれど、私は『行けません』と残ったんです。その時から『来年が駄目だったらもう陸上は辞めて、別のことをやろうかな』と考え始めました」
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