鹿島がサポーター反発のヴァイラー前監督“電撃解任”理由を詳しく説明…補強などを巡るフロントとの“ズレ”が拡大
双方合意のもとでヴァイラー前監督との契約を解除。クラブ史上で最短となる、わずか半年で新体制にピリオドを打った理由をこう語った吉岡氏は、サッカー界を驚かせた、解任時点で4位だった順位に対しても次のように言及している。 「まだタイトルが取れる、ということでチーム全体が前向きに取り組めるような環境を整えることが必要だと思い、このタイミングでの解除になった」 11月5日に最終節を迎えるJ1リーグ戦は残り10試合。常勝軍団のバトンはコロナ禍で来日が遅れたヴァイラー前監督に代わって開幕直後の指揮を執り、リーグ戦で3勝1敗の成績を残した岩政新監督に託される。 失速した原因のひとつに、10ゴールをあげていま現在もJ1得点ランキングのトップタイに名を連ねるFW上田綺世(23、サークル・ブルージュ)の移籍がある。リザーブメンバーを含めた選手層も薄く、今夏の早急な補強が不可欠なのでは、と問われた吉岡氏は、考え方は岩政新監督と一致しているとこう語った。 「そこに関しては、シーズン当初から岩政監督とも話している。いい選手はいるので、いかに彼らの発揮率を上げていけるかが重要だと思っている。岩政監督自身もいまいる選手たちの能力を信じ、このメンバーでも勝てると話していた」 まだ来日していない新外国人、ナイジェリア出身のFWエレケ(26)は、ルツェルン(スイス)でヴァイラー監督のもとでプレーした縁がある。指揮官交代はすでにエレケへも伝えられ、すべてを理解した上で合流する運びになっているという。 東京学芸大から加入し、10年間所属した鹿島を2013年オフに退団。タイやJ2のファジアーノ岡山、関東サッカーリーグ1部の東京ユナイテッドFCで鹿島とは異なる経験を積んだ岩政氏は、2018シーズン限りでの引退後は指導者の道を歩んできた。 吉岡氏に先駆けて応じたオンライン取材。9年ぶりに復帰した古巣で、いつかはと志していた監督を突然拝命した胸中を岩政新監督はこう明かした。 「身が引き締まる思いとか、覚悟がどうとか、言葉にすればいろいろとあるんでしょうけど、そんなことを考える暇もなく、何をしなければいけないかに頭をめぐらせている」 もっとも、コーチとしてヴァイラー体制を支え、間近でチームを見てきた一人として、岩政氏はこんな危機感をつけ加えることを忘れなかった。 「課題はかなりあると思うが、サッカー的にはいまの順位以上に、いろいろなものが壊れている状態だと認識している。そこに整理をつけて、選手たちが自信を持って、なおかつ帰って来られる場所があると認識させた上でサッカーをさせていかないと、迷子というか、暗闇のなかでサッカーを続けてく状態になってしまう」 試合のなかで必ず訪れる、上手くいかなくなったときに立ち返れる場所がないと指摘した岩政新監督だが、そうなった状況はコーチだった自身にも責任がある。すべてを受け止めた上で、40歳の青年指揮官は鹿島に関わるすべての人々へこう訴えた。 「ミスはミスとしてクラブも僕も選手たちも認めて、前に進もうとしている。僕は応援というよりは一緒に肩を組み、手を組んで前へ進んでいく雰囲気を作っていきたい」 新体制の初陣となる14日のアビスパ福岡戦(県立カシマサッカースタジアム)を待つまでもなく、レジェンドに託された、常勝軍団の再建を目指す戦いは本格化していく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)