「気がつけばSCPに夢中に…」ネット発のホラー“きさらぎ駅”“八尺様”に触発された作家・梨の原点
梨さんの原点とは
2020年から海外の創作ホラーストーリーサイトである「SCP財団」で人気作を連発、2021年には自身のnote「瘤談」がインターネット上で話題を集めたほか、2022年には初の単著となる『かわいそ笑』を発表して多くの読者を恐怖させたホラー作家の梨さん。 【画像】 ホラー作家の梨さん。 2024年7月19日からは、三越前福島ビルにて展示型イベント「行方不明展」の開催も予定されるなど、まさに令和時代を代表するホラー系クリエイターの一人だ。後編では梨さんの創作ルーツや、変わりゆく今の時代における「ホラー」のあり方などを聞いた。 ※この展示はフィクションです
ネット発のホラーが入り口だった
――ホラー好きになるきっかけとなった作品などあれば教えてください。 梨 多くのホラー好きの方は、きっと小さい頃に「口裂け女」とか「トイレの花子さん」のようなフォークロア(民間伝承)や都市伝説に触れてきたのが原体験だったのではないでしょうか。これは1970年代と1990年代にそれぞれオカルトブームが起きたのと関係しているのですが、私はその後に生まれた世代です。 なので、幼少期はこうしたフォークロアそのものや、そうしたものをプロが編集した怪談ではなく、ネット上の匿名の存在が生み出した“ネットロア”が入り口になっています。花子さんより先に「八尺様」と出会った世代と言えばわかりやすいでしょうか。なので、きちんとした「作品」として世に出ている民俗学者・常光徹先生の「学校の怪談シリーズ」や、稲川淳二さんの怪談などは後になってから知りましたね。 ――2021年のnoteに投稿された「瘤談(こぶだん)」で梨さんを知られた方も多いですが、ホラーファンの間では梨さんといえば「SCP」という方も少なくない印象です。「SCP」との出会いも作家人生の上では大きなものだったのでしょうか。 梨 非常に大きかったです。実はSCPとの出会いはネット掲示板上で画像荒らしに遭遇したのがきっかけでした。彼らはネットに落ちている“恐怖画像”を脈絡なく掲示板に連投して嫌がらせをする愉快犯なのですが、日がな一日そういう場所に入り浸り、大抵の恐怖画像は知り尽くしていた当時14歳の私にとってはなんてことない存在でした。 けれど、ある日それまで見たことがない恐怖画像たちが貼られるようになって、「これはなんだ!?」と調べるとどうやら「SCP」という海外の創作怪談サイトから引っ張ってきたものだとわかったのです。