皇后雅子さま61歳に 雅子さま華麗なるレースの装い 英国のドレスは洋花のレース アジアでは幾何学模様のスタイリッシュなレース
同じリバーレースのドレスでもデザインによって、ずいぶん印象が変わる。 2019年5月、令和に入って最初の国賓として米国のドナルド・トランプ大統領が来日。皇居の宮殿で、両陛下主催の宮中晩餐会が開かれた。 雅子さまが白いロングドレスの上に羽織られていたのは、ひときわ薄いリバーレースのジャケット。透けるように薄いネット地に、花と葉の柄をバランス良く配置させており、難しいデザインなのだという。 実は、花模様などがびっしりと詰まった古典柄のほうが、機械で織り上げる際も糸の張り具合などのバランスを取り易く、傷による生地のダメージもまだ少ないという。 ■インドネシア訪問で、雅子さまが選んだ幾何学模様のレース 雅子さまがお召しのように、無地の薄いネット地を用いたレースデザインは、海外で好まれるデザインだ。 ただし、織り上げるのがとても難しいレース生地だと、澤村さんは説明する。 「うちの場合であれば、ジャケットをあのデザインで織り上げるための設計図を作る作業だけでも1カ月半は必要です。初めのデザインをスケッチする段階から工程を経てレースを完成させるとなれば、4カ月はかかるでしょう」 雅子さまのレースジャケットがほのかに煌めいているのも、フィルム糸の効果だ。しかし、フィルム糸はとてもデリケート。切れることなく完成させるにも高度な技術が必要だ。見えない部分にも手間暇がかかっている。 「さすがは皇后さまの衣装です」と、澤村さんもうなる。
皇太子妃時代、ベルギーのフィリップ国王夫妻を歓迎した16年の宮中晩餐会では、リバーレースにスパンコールとビーズを手縫いで縫い付けられた豪華なイブニングドレスをお召しだった。 雅子さまのレースの装いは、ドレス以外にも見ることができる。 23年6月に両陛下がインドネシアを訪問した際には、刺繍レース(エンブロイダリーレース)のロングジャケットをお召しだった。 スタイリッシュな雅子さまのイメージに近い、幾何学模様のレース生地だ。 「直線の刺繍で幾何学模様の柄を描くレース生地も、昔からある王道の柄のひとつです。設計図次第でいかようにも描くことができるのもリバーレースの魅力です」 澤村さんによると、幾何学模様のレース生地は東南アジアで好まれる柄。インドネシアという訪問先に雅子さまが配慮されて、選ばれたのかもしれない。 ■国ごとに異なるレースの柄をお召し 今春の園遊会でも、このレースを愛用されている。 お召しであった淡いグリーンのジャケットのインナーが、リバーレースだ。生地の端には、リバーレースの特徴であるまつ毛のような糸(アイラッシュ)が見える。 およそ2万本の糸で織り上げられるリバーレースは、花弁や蔦の陰影すらレースで表現することができる奥深さがある。「栄レース」でも、機械を扱えるようになるまでに1年以上の歳月を要し、「職人の世界と言ってもいい」と澤村さんは話す。