「料理は“型”があれば迷わない」スープ作家・有賀薫さんが教える、レシピなし料理の秘訣
自分の“型”を持つと料理が楽になる
小竹:クックパッドはレシピサービスとして長く運営していますが、レシピがあることで逆に料理の楽しみを奪っているのではないかと思う部分も少しあるんです。 有賀:それはどういった点で? 小竹:カーナビに近いのですが、カーナビがあれば目的地にすぐに行けますが、ドライブの楽しみがなくなる面もあるかなって。景色を楽しむとか寄り道をするとか地図を広げるとか。 有賀:うんうん。 小竹:それと同じで、レシピがあると冷蔵庫の中身を見て考えるとか味の調整を楽しむみたいなことがなくなる気がするんです。 有賀:私は基本的にはレシピは絶対にあったほうがいいとは思っていますが、レシピが向く人と向かない人はいると思います。 小竹:すごくわかります。 有賀:レシピを見ながらどんどん作って、失敗しても次に活かそうと考えるトライアンドエラー型の人はいいですが、料理経験が全くない人や初心者の人などは適量や加減もわからないから、やはり目安としてレシピは絶対に必要だと思うんです。 小竹:そうですね。 有賀:あと、分量を書くことでレシピの違いが出る。肉じゃがでもいろいろなタイプの肉じゃがあり、料理をしていく段階でそういった違いがあることがわかってくると、やはりレシピはあったほうがいいと感じるはずです。 小竹:うんうん。 有賀:自己流だけでは行き着く先が止まってしまうので、そこから先に進むときには必要ですよね。 小竹:有賀さんの本は、レシピ以外にも、こうするといいよみたいな“型提案”にも結構ページを割いている印象があります。 有賀:そうなんです。そうも言いつつ、レシピを見ずにパパッと作れるのが家庭料理の理想だとも感じています。 小竹:理想ですね。 有賀:家で作るときに、迷わずにできる“型”があるといい。私がスープで提案しているのは、具材とダシと調味料とオイル。この4つでスープは成り立っていると話しています。 小竹:具体的にいうと? 有賀:例えば、具材がトマトとチキンなら、だしはトマトとチキンから出るからそれを利用する。調味料の塩とオリーブオイルを入れると洋風のチキンスープになります。 小竹:そうですね。 有賀:調味料の塩と鶏ガラスープの素を入れて、オリーブオイルではなくごま油を入れたら中華スープになる。こんな感じで自分の中に型を持つと、レシピに頼りすぎずに普段の料理をパパッと作れるようになります。 小竹:毎日作るものですからね。 有賀:家庭料理で一番大事なことは「料理がある」こと(笑)。今日はごはんがありませんとなってはダメなので、骨組みだけでもあれば生き延びられるという料理ができることがまず重要です。 小竹:なるほど。 有賀:レシピがあることが問題なのではなくて、ありすぎてどこからスタートすればいいかわからないことが問題。だから、まずは“型”のようなシンプルなものからスタートすれば、レシピはすごくおもしろいものだと思います。 小竹:有賀さんのスープは、あることから始まるという骨組みを提案しているのですね。 有賀:そうそう。スープだけではなくて、料理でも自分の絶対的な“型”を2つ3つ持っていると強いですよね。