「料理は“型”があれば迷わない」スープ作家・有賀薫さんが教える、レシピなし料理の秘訣
環境から変えて「食への負担感」を減らしたい
小竹:男性の場合、キッチン台が低すぎて腰が痛くなるから料理をしたくないというケースも多くて、そういった問題もありますよね。 有賀:私も料理の問題点を箇条書きにしてみたのですが、そのうち結構な割合を占めるのが「キッチン」なんです。 小竹:そうなんですね。 有賀:高さの問題もあるし、キッチンが寒いといった問題もある。あと、今のキッチンは1人用が多い。 小竹:たしかに、1人で料理をする前提で作られていますよね。 有賀:そうそう。だから、キッチンに立つのはいつもお母さんということにもなる。そういう意味でもキッチンの問題は結構大きいと感じます。 小竹:そうですね。 有賀:私が作った『ミングル』というミニキッチンもそういったことに対応するためのものです。 小竹:どのくらいの大きさなのですか? 有賀:一辺が95cmの正方形のダイニングテーブルで、真ん中にIHが1つ埋め込まれていて、テーブルの角に小さなシンクがついています。さらに、テーブルの下には食洗機が埋め込まれています。
小竹:すごいですね。 有賀:作る、食べる、片付けるがオールインワンでできる。そして、四方からみんなが料理に参加することもできます。 小竹:コンロが真ん中だからみんなが手が届きますもんね。 有賀:キッチンの代わりというより、セカンドキッチンとしてリビングに置く。リビングで料理をするので、1人でやっている感覚がなくなり、手伝ってもらいやすくもなる。 小竹:作りながら食べたりもできますね。 有賀:もともとは1人暮らしや2人で住んでいて、あまり料理をしない人のキッチンとして考え始めたんです。 小竹:うんうん。 有賀:食というものを環境から軽くしていくことで負担感を減らしたくて。家庭料理に対して求めすぎている傾向があって、その理想からのマイナスによって、不満やしんどさなどが生じていると思うんです。 小竹:すごくわかります。 有賀:最初の基準を簡単にしつつ、料理をするという行動はなるべく促すような仕組みができないかということで考案しました。 小竹:そのように環境から新しい提案をしようと思い始めたきっかけは? 有賀:いろいろなスープの提案をしてきましたが、やはりレシピだけではそこまで多くの人には届かないので、環境からアプローチをする方法もないかなと感じ始めるようになりました。 小竹:スープの後に次のアプローチとなると、普通はほかの料理ジャンルにいくのに、いきなり環境にいったのはすごいですよね。 有賀:料理家の先生がよく自分のエプロンを作ったり鍋を作ったりするのと、そんなに感覚的には変わらないです。 小竹:そうなんですね。 有賀:スープのときも、ダシがなくてもできるとか煮て塩をかけるだけでもおいしいみたいな提案をしたら、そういう発想でレシピを作る人が少しずつ増えた気がするので、キッチンなども提案することによって、さらに改良していってもらえたらいいかなと思っています。