憧れの金刀比羅宮へ。御本宮まで785段の長い石段にチャレンジ
古き良き門前町を散策する
参拝して石段を下り、向かったのは国重要文化財の旧金毘羅(こんぴら)大芝居。1835年に建てられた芝居小屋で、現存では国内最古。「金丸座(かなまるざ)」の通称で親しまれ、町を挙げて盛り上がる「こんぴら歌舞伎」は4月に行われる春の風物詩だ。公演期間中以外は見学可能で、桟敷席や人力の舞台装置が江戸の昔をしのばせる。 琴平公園まで歩いて自然や展望を堪能したあと、琴平海洋博物館(海の科学館)に入った。館内にはこんぴら船や御座船(ござせん)など、船の模型も多く展示されていて興味深い。瀬戸内海は多様な文化が往来する、にぎやかな海だったのだと実感する。 続いて門前町の老舗旅館「こんぴら温泉湯元八千代」で日帰り入浴を楽しむ。ナトリウム―塩化物冷鉱泉の湯にのんびりつかって足の疲れをほぐした。そこから目当てのうどん店「いわのや」まで商店街を抜けてゆく。地元客に人気と聞いて訪ねたが、ひと口食べて納得した。特製の旨辛薬味「青とう」が、めんの味を引き立てて絶妙だ。「香川産の唐辛子を使った自家製です」と店主。
駅の方向に戻り、木造の灯籠では日本一高い「高灯籠」を見上げた。石の基壇の上に立ち、高さ27メートル。瀬戸内海上の船まで光が届くように設計されたそうだ。 旧街道に沿って歩いていると、地蔵尊の祠(ほこら)の隣に、「横瀬の常夜燈」を見つけた。点々と立つ灯籠は金刀比羅宮への道しるべでもあったのだろう。丸亀や多度津(たどつ)の港を経て琴平に入る各街道には、寄進された灯籠や鳥居、道標などが数多く残っているという。 琴平駅で帰りの特急を待っている時、また一つ楽しいことが。列車の到着に合わせ、「こんぴら船々」の接近メロディーがかわいらしい音色で鳴り出したのだ。こんぴらさんに参拝できてよかったと、満足しながらしみじみと聞いた。 文/北浦雅子 写真/泉田道夫 ※「旅行読売」2024年6月号の特集「駅から歩こう1万歩」より