燃費消費「今までとケタの違う削減」…ANAが運行開始、〝サメ肌フィルム実装した航空機の効果
全日本空輸(ANA)は2日、空気の摩擦抵抗を低減して最大で燃料消費量を約1%減らせる“サメ肌”フィルムを実装した航空機の運航を開始した。独ルフトハンザテクニックなどが開発したフィルムで、アジア初運航となる。既存機体の燃料消費を直接減らす技術は非常に難しく、「1%は今までとケタの違う削減」(ANA)だという。1%は小さなものではなく、大きな前進だ。(梶原洵子) 【写真】“サメ肌”貨物機の初便 ANAはボーイング777型貨物専用機(フレイター)の胴体の約7割にルフトハンザテクニックと独BASFが開発したリブレット加工フィルム「エアロシャーク」を施工し、2日に就航した。1機当たりの燃料消費量を年間250トン、二酸化炭素(CO2)排出量を同800トン削減できると見込む。2025年春に2号機として同型の旅客機を就航する。2機で効果を確認した上で、同型機材への拡大を進める。 同社は50年のカーボンニュートラル(温室効果ガス〈GHG〉排出量実質ゼロ)の実現に向け、持続可能な航空燃料(SAF)や省燃費機材の導入を進めるが、これらの調達には時間がかかる。サメ肌フィルムは「早期に実効果があるものとして進めたい」(同社)と期待が高いものだ。 同フィルムは透明でわずかにざらついている。表面に無数に形成されている深さ約50マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の微細な溝によって、飛行時に機体の表面に発生して摩擦抵抗の原因となる空気の渦を減らせるという。耐久性は4―5年を見込む。 サメ肌フィルムは航空各社の間で注目されており、ルフトハンザテクニックのフィルムはルフトハンザやANAの他にも複数社が導入を決めている。ニコンなども同様のフィルムを開発しており、ANAはB787型機でニコン製のフィルムを検証している。 一方、日本航空(JAL)は宇宙航空研究開発機構(JAXA)やオーウエルと協力し、機体の表面に直接サメ肌加工を施す技術の検証を進めている。同技術は、まず水性塗料で微細な溝構造の型をつくる。機体の表面に既存塗料を塗り、その上に型を重ねて既存塗料に溝構造を転写する。水で洗って水性の型を洗い流すと、既存塗膜上に溝構造が残るという仕組みだ。 JALなどはこれまでに小面積の施工で耐久性などを確認し、23年に国内線1機に約25平方メートルの大面積の加工を施して実証実験を行っている。今後、“サメ肌”ジェットが広まっていきそうだ。