更年期の睡眠トラブルの改善には、ホルモン「メラトニン」をいかに働かせるかがカギ【40代・50代、知れば知るほどおもしろい!ホルモンの世界⑥】
更年期になると、寝つきが悪くなったり途中で目が覚めたりと、睡眠のトラブルが多くなりがち。そんな悩みを解決するには、睡眠ホルモン「メラトニン」をコントロールすることがポイント。そのコツを内科医の工藤孝文さんに教えていただいた。眠りの質が下がっていると感じている人、必読だ。
深部体温を下げて眠気をもたらす睡眠ホルモン「メラトニン」
更年期になると、女性ホルモンの減少によって自律神経のバランスが乱れ、寝つきの悪さや中途覚醒、朝の目覚めの悪さなど、睡眠のトラブルが起きやすくなる。こんなときに知っておきたいホルモンが「メラトニン」だ。「メラトニン」は、睡眠ホルモンとしてその名前をご存じの人も多いかもしれないが、改めて、どんなホルモンなのかを工藤先生に伺った。 「メラトニンは、“夜が来たよ”と体に教え、眠る準備をさせるホルモンです。人間の体には、朝に目覚めて、夜に眠るという一日のリズムを刻む体内時計が備わっています。そしてメラトニンは、体内時計が夜になったことを感知すると脳の松果体(しょうかたい)という部分から分泌されます。すると脳の興奮が鎮まって、深部体温が下がり、それによって眠気がもたらされるのです。 メラトニンには、睡眠の質を高めたり、生体リズムを整える働きのほか、活性酸素を除去する働きもあります。さらに、糖や脂質の代謝にもかかわる、アンチエイジングホルモンでもあります。メラトニンは、加齢とともに減少しやすくなるうえ、ちょっとした生活習慣によっても減ってしまいます。これが年をとると睡眠の質が下がる大きな原因のひとつです」
<メラトニンの働き> ・深部体温を下げて眠気をもたらす ・睡眠の質を高める ・生体リズムを整える ・活性酸素を除去する ・糖や脂質の代謝にかかわる
メラトニンを正しく分泌させるには、目覚めたら朝日を浴び、夜は照明を暗くすることがポイント
では、メラトニンを正しく分泌させるには、どうしたらよいのだろうか? 「メラトニンの分泌量は、目の網膜が受ける光の量によって制御されています。朝、目覚めたときに朝日を浴びると、体内のトリプトファンというアミノ酸を材料にセロトニン(連載第3回<幸せホルモン「セロトニン」&愛情ホルモン「オキシトシン」を増やして、更年期のメンタル不調を軽くしよう>参照)が生成され、そしてその約14~15時間後にセロトニンを材料にメラトニンが分泌され、眠気がもたらされます。ですから、朝起きたらカーテンを開けて朝日を浴びることを習慣にすることが大切です。 逆に、夜に明るい光を浴びているとメラトニンの分泌が抑えられ、眠気が訪れにくくなってしまうので、就寝時間に近づくにつれ、照明を暗めにしていくのがおすすめです。また、スマホの発するブルーライトもメラトニンの分泌を抑えてしまうので、寝る時間が近づいたらスマホを見るのは避けましょう。寝るときは照明を消して真っ暗にしたほうが睡眠の質が高まります。
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