「まゆ毛や体毛の育毛剤」だけを作る会社、薬事法改正でピンチに SNSマーケティングでソフトバンク出身4代目社長が気付いた「マイノリティー」の市場
◆一つの会社では視野が広がらない
――中島代表は、啓芳堂製薬代表取締役社長のほか、株式会社ヤマタネの執行役員兼デジタル推進本部本部長や一般社団法人SDGsデジタル社会推進機構の監事など、何足ものわらじを履いておられるのですね。 私はいろいろなことに興味を持つタイプで、環境に恵まれてきたのかもしれません。 さまざまないい経験をさせてもらって、それが確実に次につながっているように思います。 「いつかは家業に関わらなければ」と思っていながらも、自由に興味の赴くままにキャリアを積み、それが結果としてすべて生きているのですから。 たとえば私はいま、グランピング運営などの会社「CAWAZ」の取締役も務めています。 埼玉県日高市に、30代の代表取締役とふたりで設立した企業で、地域コミュニティーを醸成したり、コワーキングスペースやアウトドアアクティビティが体験できる施設を運営したり。 そこで知り合った若い層に、「ミクロゲン・パスタ」のパッケージリニューアルの意見を聞いたりして、啓芳堂製薬の経営に生かしています。 ひとつの会社に長くいると、その会社の文化にしか接することができません。 さまざまな経験を経てきた自分だからこそできることがあるのではないか、と考えています。 ――次の事業承継を見据えた動きは何か考えていますか? 父は64歳で、兄は60歳で、私は57歳で事業を承継しました。 いずれは事業を誰かに承継すると思いますが、まずはちゃんと次世代が引き継げる体制にすること。 それが大前提です。 継ぐ価値のある企業にしなければ、そこから先の話にはなりません。 コロナショック以降は収益悪化が続いていましたが、昨年からの施策が功を奏したのか、今年になってようやく収益改善の見込みが見えてきたところです。 ずっと同じことをしていたら、イノベーションは生まれません。 変えなければ、次に繋がらない。 会社の土台をしっかり固めたうえで、変わることを恐れずにこれからも新しい取り組みに挑戦していきたいですね。
■プロフィール
啓芳堂製薬株式会社 代表取締役 中島 健雄 氏 1962年生まれ。大学を卒業後、1985年に株式会社山種産業(現・株式会社ヤマタネ)に入社。物流システムの開発やインターネットコンテンツ事業の新規立ち上げに携わる。2000年に同社を退社後、ソフトバンク・ブロードメディア株式会社(現・ブロードメディア株式会社)、ソフトバンクBB株式会社(現・ソフトバンク株式会社)を経て、2018年に祖父が創業した啓芳堂製薬株式会社に入社し、2020年に代表取締役社長に就任。現在、株式会社CAWAZ取締役、株式会社ヤマタネ執行役員 デジタル推進本部本部長、一般社団法人SDGsデジタル社会推進機構監事などを兼任。