「トレンドを見誤った」営業利益9割減で正念場の日産、カルロス・ゴーン独裁時代との“奇妙な符合”
一時は立て直しに成功した日産自動車が、再び傾きかけている。2025年3月期上期は9割もの営業減益の見込みとなった。今期の通期営業利益は期初に5.5%の増益を予想していたが、7割を超える減益に引き下げている。また、半年で2度にわたる下方修正も行なった。日産は今期から販売台数の拡大を目指していたが、それが失敗。その姿はカルロス・ゴーン氏が権力を握っていた時代と酷似している。 【グラフ】日産自動車の業績推移
EVでは他社に先行した日産だが…
日産は今期通期売上高を前期比10.4%増の14兆円と予想していた。 それを11月7日に0.1%増の12兆7000億円に改め、1割近い増収から横ばいへと修正したのだ。 日産の主力市場の一つが北米で、当初の今期販売台数は前期比13.3%増の143万台を計画していた。 前期の販売台数は同23.3%増の126万2000台。コロナ禍からの復調が鮮明で、2年連続の2桁増になるはずだった。 しかも、2019年3月期の販売台数は144万4000台。今期の販売計画を達成すればコロナ禍前の水準まで回復したことになり、復調を印象づけるに十分なものだったのだ。 ところが、上半期の販売実績を鑑みて今期の北米の販売台数は前期比6.2%増の134万台に引き下げた。 今期の上半期における営業利益は329億円、前年同期間と比較して3038億円減少している。 そのうち、1945億円(64.0%)は販売台数や販売費用によるもので、特に「販売費用/価格改定」が1027億円のマイナスと、大きな要因になっていることがわかる。 日産は主力の北米エリアで販売代理店に対するインセンティブを引き上げた可能性が高く、日本経済新聞は2024年7~9月の日産のインセンティブを1台平均4000ドルとしており、業界平均よりも3割高いと指摘している(「日産、不振の米国で生産3割減 世界販売目標達成危うく」)。 2024年1月に日産の米国部門は主力車ローグの改良新型を間もなく発売すると発表。 これは旧モデルを売り切る前に新型の市場投入に踏み切るものであり、インセンティブを高くしなければ、旧型の在庫が積み上がる懸念もあったのである。 ただし、誤算もあった。 現在のアメリカで人気なのは、EVよりも安価で燃費がよく、航続距離も満足できるハイブリッド車だ。 日産はe-POWERという駆動力をモーターで生み出す技術を開発しているが、高速燃費が悪いために北米エリアではガソリン車を中心に販売してきており、日産はアメリカという主力市場において、売れる車が少ないのだ。 販売台数増を掲げた日産であったが、市場が変化して売れる車が少なかったうえ、販売戦略を間違えて競合よりもインセンティブを引き上げなければならず、販売台数も伸びずに利益を削る結果となったというわけである。