〈熱暑の下刈が最大の試練〉山村の女性が作り上げた人工林、過酷な作業の改善は柔軟な発想から
植栽の適期は、西日本の積雪のない地方では、苗木が休眠している2~3月の厳寒期だった。植えたとたんに困るのは、野生動物による食害だった。当時は野ウサギ、高地では野ネズミの被害も多かった。 この時期は雑草木が枯れているので、青々としたスギやヒノキは目立って、恰好の餌となっていた。現在ではシカが増えすぎて、食害対策なしには、造林は不可能になっている。
過酷な下刈
田んぼの草取りと一緒で植栽木の間に生えてくる雑草木を刈り払ってやる必要がある。これが下刈で、植付してから5~6年生まで毎年夏の真っ盛りにやる。これを怠ると造林木が雑草木に負けて成長が遅くなる(写真2)。 下刈とそれに続く除伐もそうだが、苗木を早く成長させたいのには理由がある。早く植栽木を大きくして、林冠(森林の上部の樹木の枝葉同士が集まった部分)を鬱閉(うっぺい)させたいのだ。 幼年期の植栽木は、そのままにしておくと成長旺盛な雑草木との日光の奪い合いに負け、樹高成長で負けて被圧状態になってしまう。それを阻止するために、雑草木を刈り払って、早く植栽木が林冠を形成し、逆に雑草木を被圧する状態にもっていきたいのだ。造林作業の初期段階は、安定した針葉樹林を形成することが主目的で、樹木を早く太らせたいためだけではない(写真3)。 そのための第1段階が、前に述べたていねい植えの目的でもあった。 幼齢造林地の敵は、植栽木の成長を阻害する雑草木やつる類である。そのために下刈、つる切、除伐という作業があって、雑草木を刈り払ってやる必要がある。 植付本数の多寡によって、その後に行う下刈、つる切、除伐などの保育作業の功程が変わる。密植なら樹間に生える雑草木の量は減り、疎植なら雑草木は増える。 真夏の炎天下に行う下刈ほど辛い作業はないから、ふつうは密植にして下刈を早く終わらせたいところだが、苗木代や植付代がかかるのでそうもいかない。植付本数と下刈、つる切、除伐といった保育作業の設計は、コストにおいても、また将来の品質とも密接に関連するので、熟慮が必要なのである。 現在の補助事業のような全国どこでも同じ仕様の造林なら、何も考える必要はないが、コスト意識や森林経営の多様性が失われ、補助金の獲得が主目的の事業になってしまう。これでは林業の産業としての発展はない。