塩対応?神対応? 藤原、吉田、根尾らスーパールーキーの躍動を支える広報力
昨秋のドラフトで“ビッグ4”と呼ばれた4人の高卒の1位指名ルーキーがキャンプで奮闘している。右足のふくらはぎを痛め出遅れた中日の根尾昂、チーム方針で育成に比重を置く日ハムの吉田輝星の2人が2軍キャンプとなっている中、頭角を現しているのがロッテの藤原恭大だ。実戦に入って10打数ノーヒットだったが、初のNPB球団相手の練習試合となった中日戦で3安打2打点でデビューした。その藤原を裏で支えているのが千葉ロッテ広報部の戦略だ。話題のルーキー目当てに殺到するメディアへの対応は、球団によってまちまちだが、千葉ロッテは、藤原のインタビュー力をも鍛えながらルーキーの人気と成長をバックアップしている。
吉田輝星の「打てば響く」クレバーな対応
スーパールーキーと呼ばれるドラフト1位を2月1日から順に吉田、根尾、藤原と追いかけた。あいにく1軍帯同となっている広島の小園海斗の取材機会はまだないのだが、どこも例年に比べて異例と言える数のファンとメディアが殺到していた。 吉田は沖縄の名護からさらに車で1時間弱ほどかかる沖縄の北端にある国頭村での2軍キャンプだったが、ファンもメディアも多かった。広報部の舩本篤史ディレクターが対応。連日、報道陣のリクエストに応じて、吉田だけでなく、荒木2軍監督や担当コーチなどの囲み取材をセッティング。しかも時間と場所を丁寧にメールで報道陣に伝え混乱などが起きないように配慮していた。 吉田の真摯な対応が印象に残った。 「そこまで答える必要もない」という質問にまで答える。例えば「イベントで笑っていたけど、何を話していたか?」と聞かれ、懇切丁寧に説明。秋田の地元メディアが「そろそろ、あきたこまち(地元米)が恋しいのでは?」と聞くと「お米の感じがちょっと違うので、食べ慣れているぶん『あきたこまち』が食べたいなあって思います」とサービスする。2月2日の初ブルペン後には、メディアに「カーブはカーショー級」という見出しが躍ったが、これも吉田自らが、トラックマンによる解析データが、ドジャースのエース、カーショーに似ているという話を明かしたもの。打てば響く。そのクレバーさにプロで成功する選手の条件を満たしている、と感心した。 根尾の沖縄読谷2軍キャンプにも、ファン、メディアが殺到していた。我々のようなNPBパスのない取材者には各球団からキャンプ用の取材パスと帽子が配布されるが、例年は北谷キャンプも読谷キャンプも共通のものだったが、今年は、取材パスに「北」「読」とスタンプを押して、それぞれの受付が必要になっていた。 根尾の取材は一番辛かった。根尾は第2クールの途中まで屋外で打たずに室内でマシン打撃を行っていたが、その様子を取材することは一切禁止。入り口付近に近寄り覗こうとしただけで広報に怒鳴られていた記者もいた。なぜか評論家だけは入出OKだった。報道陣の数を考慮すると、狭い室内には、とても入りきらないし練習進行の妨げにもなるのは理解できるが、何か工夫はできなかったものか。 根尾が姿を見せるのは、ほんの一部で、メディアはほとんどの時間をメイン球場とウエイト施設の間付近で忍耐強くずっと待つだけ。中日も、連日、根尾の囲み取材を設定してくれていて、広報が「そろそろ」「3時半くらい」と一応の取材の目安時間を伝えてくれるが、日ハムの広報のように時間と場所を明確にアナウンスしてくれないのでメディアは徒労の時間を過ごすことになる。 与田新監督が積極的にメディアサービスを行っている一方で、落合元監督、森前監督と1軍のトップがろくにメディア対応をしてこなかった“負の文化”が、まだどこかに残っているのかもしれない。 根尾も、あまり語ることのないリハビリメニュー中に連日、カメラの前に引っ張りだされて、さぞかし辛かったのかもしれないが、吉田同様、クレバーな応対をしていた。しかし、テレビカメラが退いた後のペン記者の囲みになっても、あまりくだける様子もなく「これが根尾の本当の姿なんだろうか」と感じるやりとりもあった。