塩対応?神対応? 藤原、吉田、根尾らスーパールーキーの躍動を支える広報力
だが、新人の過度なメディア対応は、時には肝心の練習に支障をきたす恐れもある。梶原氏は、できるだけ藤原とのコミュニケーションを密に取ることで、取材が負担になっていないかを判断。 「話をしていて疲れているなあと思った際は取材を短めにしてもらうなどの配慮はしています」。その裏にあるのは「マスコミ嫌いにだけはなって欲しくない」との願いだ。 ロッテでは新人に対して、ここまで入念なメディア対策を講じているが、過去には、失敗や反省もある。 梶原氏にまだ「あの時のメディア対応が本当に良かったのか」と答えが出ていないのが、2014年のドラフト2位で入団した京大初のプロ野球選手、田中英祐投手のケースだ。 「異例の学歴を持つ男がプロ野球の世界で一流になることは子供たちにとっても夢が広がる」と考え、1月の自主トレ、キャンプ、オープン戦と、今回の藤原同様のメディア対応を行い、オファーのあった取材は、ほとんど受けて「価値の最大化」を図った。 オープン戦では順調に結果を残していたが、開幕は2軍スタートとなり、4月29日の西武戦でプロ初先発。だが、初回に4点を失うなど3回5失点という内容で敗戦投手となり、2日後の5月1日の日ハム戦では中継ぎ起用されたが、ここでも3回で4失点。結局、以降、田中の1軍登板機会はなく、3年で退団。現在は、三井物産に再就職している。 「話題の最大化をしましたが、結果的にそれが本人には大きな負担となっていたと思います。もしかすると、もう少しスポットライトが当たらないようにこちらが工夫をすればプレッシャーが軽減し結果が伴っていたのかもしれないと。いつか、時間が経ってから本人に聞いてみたいと思っています」 梶原氏は田中と再就職先での仕事が落ち着いたら「思い出の京都で食事をしながら当時の話をもう一度しよう」と約束しているという。 また広報として「ドラフト下位の選手が一度も取材を受ける機会もないまま引退してしまうのを見ると申し訳なく思います。1位選手だけではなく、なるべく公平に露出の機会を与えられるように配慮したいと思っていますが、これだけは、なかなか上手くいかないんです」との思いもある。メディアも話題や結果がなければ取り上げにくい。広報がコントロールできない部分だろう。 スーパールーキーの売り出しの裏には、それを支える広報部の涙ぐましい努力がある。プロの世界、結果がすべて。だが、正しいイメージ戦略は、その成功を後押しする手助けにはなる。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)