なぜ日本サッカー協会は地域の街クラブなどグラスルーツの経済支援を最優先で決めたのか?
猛威を振るい続ける新型コロナウイルスの影響を受けて資金難に陥り、経営的に苦しい状況に直面している地域の街クラブやスクールを支援する事業を、日本サッカー協会(JFA)がスタートさせた。 JFAは4月下旬の段階で、8項目で構成される新型コロナウイルス対策「JFAサッカーファミリー支援事業(仮称)」を立ち上げている。今月14日の理事会における承認をへて正式に運用開始となるなかで、喫緊と判断した「相談窓口設置」と「財政支援」を7日から先行開始した。 国や地方自治体を介さずに、JFAが直接かつスピーディーに財政を支援する対象は、第1次支援となる今回は街クラブやスクールなどに限定された。Jリーグやなでしこリーグ、フットサルFリーグなど傘下の連盟に加盟するクラブは別途検討する予定で、いわゆるグラスルーツへの支援を先行した理由を、7日にオンライン会議アプリ『Zoom』を介したメディアブリーフィングを開催したJFAの田嶋幸三会長(62)はこう説明している。 「小さな街クラブなど、さまざまなところから『何とかしてほしい』という悲鳴が日本サッカー協会へ届いています。理事会の前に支援制度をスタートさせたのは、もう待ったなしだと思ったからです。日本サッカー界の先人たちが長年をかけて築きあげてきた、サッカーを楽しむための環境を一度でも手放してしまえば、その復旧に多くの時間を要すると考えられるからです」 ブリーフィングで示された設計骨子案では、JFAへ融資を申請できる条件として【1】2019年のチーム活動の実績がある【2】一定のクラブ規模がある【3】4月もしくは5月の月次収入が前年度同月比で半分以上減少している【4】指導者の雇用などクラブ環境の維持に最大限努める――と記されている。 特に【2】のクラブ規模に関しては【A】専任の有給コーチが少なくとも1人以上いる【B】アルバイトのコーチが5人以上いる【C】自己占有しているホームグラウンドがある【D】毎月の固定的なキャッシュアウトが100万円を超える――のいずれかに該当すること、と定められている。 その上で当面の2カ月間を想定したサッカー環境の維持を目的に、コーチの給料やクラブハウスの家賃および水道光熱費、グラウンドの土地代などの資金として、JFAが設置した審査委員会が1週間ごとに下していく判断のもとで30万円から最大で500万円が無利息、無担保で融資される。返済期限は最長10年で、初回返済は2023年まで延長できるとした。 申請はすべてウェブフォームを介して行われる。メディアブリーフィングに先駆けて、7日午後2時半にJFAの公式ホームページ上に特設サイト(https://www.jfa.jp/ffsupport/)を開設。すでに仮受付が開始され、同時に相談や問い合わせを受けるための専用の電話番号も設けられた。