資産運用を任せていた夫が亡くなったら「口座の資金」はどうなる?口座の存在に気付かなかったら没収される?
「資産運用に興味を持ったものの、自分ではよく分からないので、頼りになる夫(妻)に投資に関するあらゆるアドバイスを受けながら取引をしている」そんな方も多いでしょう。 しかし、もしその夫(妻)に万が一のことがあったら、どうすればよいのでしょうか。手続きの仕方も口座がどこにあるのかも分からず、最悪の場合、「ずっと自分で見つけられず放置してしまうのではないか」「最悪、国や証券会社に没収されてしまうのではないか」と不安になる方も少なくありません。 そこで本記事では、そんな疑問に回答するとともに、放置してしまった口座を見つける方法について、解説します。 ▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる?
放置すると国に没収される? そんなことはありません
筆者は、資産運用について配偶者からアドバイスをもらって運用している女性から、このような質問を受けることがあります。 「もし、夫が亡くなって、その後10年間、私も口座の存在を忘れて放置したら、国または証券会社に没収されてしまうのではないか?」 しかし実際、そんなことはありません。 もし、自身の口座の存在に気付かずに長年放置したとしても、その資産は証券会社の資産とは分別して管理されています(金融商品取引法42条の4)。差し押さえの対象になるなど特別な理由がない限り、その資産が勝手に処分されることはありません。 なぜ、このような誤解が生じるのでしょうか?その理由として、2018年から始まった休眠預金等活用法と、民法959条による相続財産の国庫帰属が考えられます。 相続財産の国庫帰属制度とは、相続人の捜索の公告の期間満了まで相続人が現れず、また特別縁故者に対する相続財産の分与を経てなお相続財産が余った場合に限り、国庫に帰する、というものです。 つまり、相続人がおらず、正当な手続きを踏んでもなお引き継ぐ者がいない相続財産に限って、国庫に帰属する、というものですが、「相続人がいなければいきなり国の財産にされてしまう」と考えている方も少なくないようです。 一方、休眠預金等活用法とは、10年間取引がない預金口座のうち、休眠預金として指定されたものは、政府が指定した活用団体を通じて貧困対策や地域活性化などの社会課題の解決に活用される、というものです。 ただし、証券会社に預けた資金は、この休眠預金の対象ではありません。つまり、10年間放置したからといって、政府が別の使い道に使ってしまう、ということはありません。 なお、休眠預金の対象となるのは、銀行の普通預金や定期預金をはじめ、ゆうちょ銀行の通帳貯金や定期貯金、定額貯金、信用金庫の普通預金や定期積金などです。一方で、外貨預金や仕組預金、財形貯蓄、などは対象外です。銀行や信用金庫などで保有している預金が対象となります(※1)。