最低賃金引き上げが「多くの日本人の給料」を上げる納得理由、恩恵受けるのは最低賃金で働く人だけではない
■終身雇用の知られざる「弊害」 最後に、日本の終身雇用制度という要因がある。終身雇用制度は正社員に雇用の安定をもたらす一方で、より高い賃金を求めて他の企業に移ることを妨げることによって、労働者の交渉力を抑制している。 企業が優秀な労働者を確保するために競争しなければならない国では、賃金は高くなる。ポジティブな兆候の1つは、若年で高度な技能を持つ労働者の労働移動が増加し、彼らの賃金が改善していることである。
最低賃金の引き上げについては、政治的意志があれば日本も大きな一歩を踏み出せることを証明している。今こそ、同一労働同一賃金の実施から労働移動の阻害要因の除去まで、すべての労働者の実質賃金を引き上げるために必要な他の措置を講じる時である。日本の労働者が自分の作ったものを買えるようにならない限り、日本経済は回復などありえない。
リチャード・カッツ :東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)