最低賃金引き上げが「多くの日本人の給料」を上げる納得理由、恩恵受けるのは最低賃金で働く人だけではない
■非正雇用が増えると、正規雇用者も影響を受ける アメリカも似たような経験をした。約10年前から、多くの州や市が最低賃金を15ドル(約2200円)に引き上げた。現在、アメリカの労働者のうち15ドル未満の賃金を得ているのはわずか13%で、ほんの数年前の32%から大幅に減少した。それでも雇用は拡大しており、失業率は最低賃金であることが多い若年労働者であっても依然として低い。 2009年から2019年にかけて、最近のインフレ率が上昇する前であっても、全労働者の実質賃金は10%近く減少した。その主な理由は非正規労働者の増加である。
2019年、正規労働者の平均時給がほぼ2400円(ボーナス含む)だったのに対し、パートタイム労働者の平均時給はわずか1100円(女性)と1200円(男性)だった。2010年代には、非正規は全従業員の4割近くに達していた。 正規と非正規の賃金がまったく変わらなかったとしても、非正規が増えるだけで平均は下がるという算段だ。それだけではない。非正規雇用を増やすと、雇用主は正規雇用に対する交渉力を強め、その結果、賃金が抑制される。
これにより、2009年から2019年にかけて、正社員の実質賃金はほぼ横ばい(上昇率は2%未満)にとどまっている。非正規労働者の実質賃金は8%上昇したが、これは主に最低賃金の上昇によるものである。 また、同じような動きによって、すべてのフルタイム労働者、さらには男性フルタイム正規労働者の賃金も押し下げられている。これは女性に対する賃金差別が原因である。平均的な女性フルタイム労働者の賃金は男性より25%低い。
2013年から2024年にかけて、企業は男性正社員の数をわずか3%(わずか47万人)しか増やさなかった。一方、女性正社員は26%(267万人)増加した。 フルタイムの男性正社員でさえ、このような賃金差別によって賃金が抑制されていることに気づいている。2000年から2019年まで、彼らの実質時給は横ばいだった(19年間で合計わずか0.6%の上昇)。 企業は、男性正社員を低賃金の正社員に置き換えるという脅しを利用して、賃金の引き下げ圧力をかけてきた。利益を上げている企業は簡単に大量解雇に踏み切れないが、大手コングロマリットは男性正社員を賃金の安い子会社に送り込むことができる。