最低賃金引き上げが「多くの日本人の給料」を上げる納得理由、恩恵受けるのは最低賃金で働く人だけではない
岸田文雄元首相の言う通り、可処分所得を上げなければ日本は立ち直れない。所得不足は、今日の実質個人消費が10年前より2%低い主な理由である。しかし、最低賃金以外については、岸田氏は中途半端な美辞麗句を並べただけで、ほとんど何も進言したことはなかった。 ■最低賃金が上がることの意味 民主党が初めて最低賃金1000円を提唱したのは2009年のことである。そして2016年、安倍晋三元首相は2020年までに1000円の目標を達成するため、毎年3%の引き上げを提案した。2022年に最低賃金が961円に引き上げられたとき、2000万人がそれ以下の収入しか得られていなかった。
このうち3分の2が女性だった。非正規雇用の女性が多かったこともあるが、正規雇用の女性でさえ”差別”を受けている。が、賃金が低いのは非正規雇用者だけではない。2016年には、男性正規雇用者の10%、女性正規雇用者の30%の賃金が1000円未満だった。 最低賃金が上がれば、それ以下の人たちだけでなく、それよりも10~20%高い賃金を得ている何百万人もの人たちも助かる。最低賃金が上昇するにつれて、日本ではOECD基準で低賃金とみなされるフルタイム労働者(フルタイム賃金の中央値の3分の2以下の収入しか得られないフルタイム労働者)の割合が急減した。
最低賃金が上昇するにつれて、低賃金層に属するフルタイム女性の割合は、1985年のほぼ半数(45%)からわずか18%に減少。男女合わせた割合では、1985年の19%から10%に減っている。 2000年代半ばまで、日本の有権者は最低賃金引き上げの必要性を感じていなかった。それは、日本がOECD加盟国の中で最も平等な賃金分配を享受していたからである。しかし、失われた数十年が経つにつれ、その平等性は失われた。企業はより多くの非正規労働者を低賃金で雇うようになった。
東京、大阪、神奈川を含む12都道府県で、最低賃金を得ている人の中に生活保護を受ける資格を持つ人がいることがわかり、国民は対策を求めた。自民党は2007年に最低賃金法の改正で民主党と合意した(背景には衆議院戦における民主党との競り合いが激化していたことがある)。 最低賃金の引き上げは、企業側が予測していたような大きな雇用喪失を引き起こさなかった。2000年以降に各国で実施された研究のほとんどが、最低賃金の段階的引き上げは雇用損失をゼロに近づけることを示している。だからこそIMFは2016年の報告書で、日本の最低賃金の大幅引き上げを勧告したのだ。