羽生か、宇野か、フィギュア新4回転時代を勝ち抜くのはどっち?
フィギュアスケートのシーズンが本格的に幕を開けた。 “王者”羽生結弦(21、ANA)は、先のスケートカナダで自身のGPシリーズ初戦を迎え、SPで4位と出遅れたが、フリーでトップに立って挽回、2位にまとめた。“前哨戦”のオータムクラッシックで世界初となる4回転ループに成功。今回も、SP、FSの冒頭に4回転ループを組み込み、いずれも転倒してしまったが、FSでは4回転4つという難易度の高いプログラムに見通しを立てた。複数のメディアによると、羽生は「(4回転4つに)ちょっと光が見えた。順調な滑りだし」と語ったという。 シニアデビュー2年目となる宇野昌磨(18、中京大)は、羽生より1週前のスケートアメリカでGPシリーズ今季初戦に出場して見事に優勝を飾った。SP首位に続きFSでもトップを守り、自己ベストの計279・34点をマーク。ギネス認定された4回転フリップを含む4回転ジャンプを3本成功させ、「今季は練習でやっていることが試合でできるようになりました。昨季の経験や悔しい思いが、今年につながっています。自分の実力を出し切って優勝できたので、成長を実感しました」と、手ごたえを口にしていた。 多種類の4回転ジャンプを複数回入れる“新4回転時代”に新しいチャレンジをしているのは、日本の2人だけではない。シニアデビューしてきたネイサン・チャン(17、アメリカ)は、練習では、4回転ループ、フリップ、ルッツまで跳ぶし、フリーに5本も入れてくる新時代の申し子。今季開幕はまだ不調だが、昨季SPで、4回転ルッツ+3回転トーループに成功、フリーで3種類4つの4回転を組み込んで衝撃を与えたボーヤン・ジン(19、中国)など、新4回転時代を先取る新世代のスケーターが生まれている。 では、海外メディアが「マッドネス(熱狂の)4回転時代」と評している新4回転時代を2年後の平昌五輪を含めて、勝ち抜くのは誰なのか、どんな選手なのか。 元全日本2位で、現在インストラクターとしてジュニアの育成に熱心な中庭健介氏に、まずは、ここまでの羽生、宇野両選手の出来について聞く。 「羽生選手の初戦は、怪我の影響からか、まだ満足な練習をできていないんだな。重そうだなという印象を受けましたが、GPのスケートカナダではかなり良くなっていました。冒頭の4回転ループは、SPもFSも転倒しました。4回転ループは右足で踏み切り、右足で降りるので、左足を痛めていた羽生選手にとっては、前哨戦は怪我の功名的にうまくいったのだと思いますが、がツンという体の張りのようなものにかけていました。彼は、4回転を際立たせずに曲の中に、なめらかに溶け込ませたいと考えているようですが、まだ4回転ループに関してはそこまで練習は足りていないように見え、重たく、鋭さがありませんでした。 ただ、転倒後も、崩れずに乱れませんでした。V4を狙うグランプリファイナル進出に向けて、ここでは表彰台の順位を確保しておこうという狙いだったのでしょう。それを着実に達成するあたりに積み上げてきた実力を感じます。フリーで採用したピアノ曲は丁寧な羽生選手の演技にマッチしていたように思います」