並ぶだけで「4時間1万円」の報酬…“転売ヤー”が暗躍し続ける背景に「中国の転売組織」の存在。企業が“利用する”事例も
「稼働4時間で即金1万円」…誰が飛びつくのか
こうした「買い子」や「並び屋」のバイトは、「稼働4時間で即金1万円」のように割りのいい案件が多い。 そこで、時間を持て余した大学生や、リモートワークで融通が効くギグワーカーなどが応募に申し込む。そうした入り口から、国内でも個人の転売ヤーが増えていくという。 「最初は買い子や並び屋をしていた日本人が、転売で稼げることを知り、次第に自分で転売を始めるケースが増えていきます。特に20~30代は、起業して手っ取り早く成り上がりたいと夢見る人も以前より多い。そうしたマインドに刺激され、転売に身を染めていく若者も一定数います。 また興味深いのは、転売にはある種のゲーム性があることです。限定品の発売時期を常時監視しながら、タイミングを逃さず商品を購入し、旬が過ぎないうちにフリマアプリなどで捌き切る。こうした一連の流れを経て、利鞘を獲得するのに、狩猟のような成功体験を感じているのでしょう。 加えて、商材が売れ残った時のリスクを回避できたと考えると、ギャンブルに勝った時のような快感も味わえる。そうして気付かぬうちに、転売ビジネスにのめり込んでいく人もいるのです」
企業が転売ヤーをリクルートする理由
転売が蔓延する一因には、企業側の黙認も大きい。当然、転売が横行するほど商品が捌けるため、企業からすれば儲けもんだ。 もっと言えば、企業側が話題作りの一環として、転売ヤーを利用する事例も見られるという。奥窪氏が続ける。 「企業側が、供給量を絞ってプレミア感を演出し、品薄情報を出す事例は散見されます。それで『発売5分で完売』『転売ヤーが殺到!』などと発信すれば、話題作りの一環にもなりますよね。そういう意味では、企業側と転売ヤーが、ある意味マッチポンプのような関係を築いているケースもあるのでは、と思います。 それからデパートの外商が、顧客が転売すると分かっていながら、希少なウイスキーや日本酒を提供している話もありました。デパートからしても、高額を使う太客との関係は切れないうえ、外商自身の営業実績にも影響してくる。転売を通じて蜜月関係を結ぶ巧妙なスキームです。 あと中国の話ですが、自社の商材を転売して儲けるインフルエンサーを高額で雇う企業もあります。要は、インフルエンサーが抱えているフォロワーは、企業にとってそのまま顧客になるので、転売ヤーと敵対するより囲い込んだ方が得策なんですね」