女性たちが避妊・中絶薬を買いだめるアメリカ、生殖の自由と権利はどこへ?
買いだめなどの「備え」は必要?
懸念すべき理由があることは、間違いない。備えておいて、損はない。トランプ次期大統領は選挙活動中、リプロダクティブ・ヘルスに関連した医療を制限する考えがあるかどうかについて、よく言っても「曖昧」な態度を貫いた。 5月には、避妊に関する個人の権利を州政府が制限することについて、「検討している」と述べたものの、その後にSNSで発言を撤回。4月には『タイム』誌のインタビューで、(中絶が認められる時期かどうか)妊婦を監視したり、中絶した女性を刑事訴追したりするかどうかについて、判断するのは州政府だとコメントした。
ちなみに、トランプは連邦最高裁がロー対ウェイド判決を覆したとき、自画自賛する発言をしている。最高裁のこの判断により、21の州が中絶を部分的、または完全に禁止。なかには中絶のための処置を行った医師に禁固刑や罰金刑が科される州もある。 そのほか、そのインタビューでトランプはミフェプリストンの今後について、「重要な発表をする」予定だと発言。14日以内に声明を出すと明言したが、実際には何もしなかった。そして、8月の記者会見では、この経口薬へのアクセスを制限する可能性を否定しなかった。
そのほかトランプには、超保守派が打ち出した次期政権の政策に関する構想、「プロジェクト2025」との関連性も指摘されている。超保守派のシンクタンク、「ヘリテージ財団」が示したこの構想では、中絶薬の利用の制限、医療機関による中絶処置の停止(緊急時も含む)、避妊薬の購入に対する公的支援の廃止などが提案されている。 「プロジェクト2025」は、第1次トランプ政権の関係者や、トランプの選挙運動、政権移行チームに加わった人たちが執筆担当者の半数以上を占めているものの、トランプはこの構想について、「知らない」と主張している。 今後、たとえ避妊具や緊急避妊薬、中絶薬へのアクセスが引き続き認められるとしても、これらはすべて、大幅に値上げされる可能性がある。アメリカでは2012年に医療保険制度改革法(通称「オバマケア」)が施行されて以来、すべての女性が無料で避妊薬を入手したり、避妊のための処置を受けたりすることができるようになったが、トランプはこの法律への対応についても、明言を避けている。 「全米女性法律センター(National Women’s Law Center)」によると、この法律の規定が変更、または廃止されれば(プロジェクト2025は廃止を提言)、影響を受ける女性は5500万人を超えるとみられている。そのほか「アメリカ進歩センター(Center for American Progress)」によれば、無料の緊急避妊薬を入手できなくなる女性は、4800万人近くにのぼるとみられる。