女性たちが避妊・中絶薬を買いだめるアメリカ、生殖の自由と権利はどこへ?
かつてなく高まる「警戒感」
大統領選の投票日の翌日、生殖に関する医療サービスを提供する非営利団体、「プランド・ペアレントフッド・アクション・ファンド(Planned Parenthood Action Fund)」のウェブサイトはアクセス数が急増した。 避妊方法の「卵管結さつ術」と「精管切除術」について説明したページへの訪問数は、それぞれ前日から1700%、1200%増加し、IUDとその装着のための処置に関するページのクリック数は、それぞれ500%、1200%増えたという。 認定看護師助産師(CNM)でもあるこの団体のバイスプレジデント(中絶アクセス担当)、ダニカ・セヴェリノ=ウィンによると、処置の予約の件数も、前日から急激に増加。精管切除とIUD装着の予約はそれぞれ、1200%、760%増え、避妊インプラント挿入の予約は350%増えた。 処方せんなしで購入可能な避妊薬や中絶薬をオンライン販売する「ウィスプ(Wisp)」によると、投票日の翌日には前日と比べ、中絶薬の注文数が600%、緊急避妊薬の売上高が約1000%増加した。
別の緊急避妊薬、「リスタート(Restart)」を販売する「ウィンクス・ヘルス(Winx Health)」は、この薬の販売数が投票日の翌日、前週の販売数の7倍に増加したと明らかにしている。注文の75%は、「まとめ買い」だったという。
「プランド・ペアレントフッド」によると、連邦最高裁判所が2022年、1973年に示していた「人工妊娠中絶の権利は合憲」だとする判断(ロー対ウェイド判決)を覆したとき、そして2016年、大統領選でトランプが勝利したときにも、こうした需要の増加がみられていた。 2016年の大統領選後には、薬の販売数だけでなく、IUDの装着やインプラントの挿入など、避妊効果が長期的に持続する処置を受けた人が増加した。シャーロット(24)はこのときのことを振り返り、次のように話している。 「それまで経口避妊薬を服用していましたが、トランプが大統領選で勝利したその週に、IUDを装着しました」 「高校の最終学年でしたが、私が進学を希望していたのは主に、トランプが勝利した州にある大学でした。保守的なことで有名な州です。避妊へのアクセスが妨げられるリスクを避けたいと思い、より安全な方法を取りました」 全米を対象に中絶薬の通信販売を行う非営利組織、「エイドアクセス(AidAccess)」によると、避妊や中絶のための薬や処置の需要は選挙後、それまでになく高まったという。関係者はUS版『コスモポリタン』誌の取材に対し、「ドブス(対ジャクソン・ウィメンズ・ヘルス訴訟)についての判断が示された後以上」だと話している。 (連邦最高裁は2022年、ミシシッピ州が2018年に制定した妊娠15週目以降の中絶を禁じる州法の合憲性について、州法を支持する判断を示している)