松任谷正隆と小原礼が語る、前人未到のバンドSKYEの最新アルバム『Collage』後編
不良になりきれない不良っていうのにすごい憧れがあって
Paint It Black / SKYE 田家:作詞が林立夫さんで作曲が小原礼さん。歌も小原さん。 小原:はい。林もハモを歌っています。 田家:さっきの「BLUE~ネガフィルム」のイメージとこの林さんのBLACKはつながりはあるんですか? 松任谷:これは曲順は小原がほぼ考えたので、偶然そうなったんだと思います。 小原:そう、偶然。 田家:お作りになったときは別にそれは? 松任谷:はい。僕が最後にBLUEって入れて、よく考えたらなんかブルーフィルムみたいなだなって。 小原:きっとそうなんだろうと思いながら、僕はやっていたんです。 田家:「Paint It Black」は林さんはどんなイメージだったんでしょう。 小原:これは要するに社会的に怖い人たちが、怖いというか、ずるい人たちがいっぱいいるというのを上手く比喩を含めて歌っている歌なんですけどね。 田家:オペラというのは意味があるんですかね。イメージとして。 小原:基本的に外国ではオペラは太ったおばさんが出てきて歌い終わるまで終わらないって言葉があるんですけど、それと引っ掛けて。オペラというのは悪いやつの、例えば集合体という意味もダブル・トリプル・ミーニングみたいなので含まれているんですよね、これ。 田家:みんなも塗りつぶしてしまえになっているんだ。そういう意味でも4人の関心の持ち方とか、今までご覧になってきたりしたことっていうのはかなり多岐にわたるでしょう。4人集めると。 小原:うん、そうかもしれない。 松任谷:みんな違いますからね。向いている方向は。 田家:でもSKYEはSKYEとしてみんな一緒になる。 松任谷:そこがこの歳じゃないとできないことかなと。若かったら、たぶん僕と小原が喧嘩別れして終わってたと思う。 小原:そう(笑)? 俺、わりと丸く収めるタイプなんだけど(笑)。 松任谷:いやいや、頑固なところあるし(笑)。 田家:頑固じゃなかったら、ここまで1人でやれないでしょうからね。アルバムは後半に入っていきます。 Night Crawler / SKYE 田家:作詞作曲が松任谷正隆さん。 松任谷:タイトルは小原。 田家:あ、そうなんですか! 小原:アメリカのUMAでナイトクローラーっていうのがあるんですよ。夜中になると徘徊するっていう(笑)。 田家:それは詞が出来上がってから? 小原:詞が出来上がってからですね。 田家:そのタイトル、どう思われたんですか? 松任谷:UMAっていうのはあまり知らなかったから、ああ、なんかいいんじゃないって感じだったんですけども(笑)。 小原:はははは! 田家:先週の話の中にキャラメル・ママのときに自分で歌うバンドをやりたかった。1977年にソロ・アルバム『夜の旅人』をお出しになって歌われていて、曲も書かれて。詞が全部松任谷由実さんでしたよね。 松任谷:そうね。自分であのときは書く感じではなかったので。だけど、やってみたらやっぱり自分じゃないなみたいにずっとくすぶっていて、今回というかSKYEを始めて、自分で歌う詞ってどういう世界なんだろうなって、それは一生懸命考えたんです。この歳で若い詞書いても全然ピンと来ないし。で、こういう世界かなって思って書いたのがこれですね。 田家:ここにきてようやく形になった。 松任谷:そうですね、時間かかりましたね。 田家:この曲もそうですけど、ブラスがとても品が良くて。 松任谷:品がいいですか! 小原:それあまり褒め言葉じゃないんですけど(笑)。 松任谷:なんか不良になりきれない不良っていうのにすごい憧れがあって。 田家:これ女性3人でしょう。市原ひかりさん、小林香織さん、駒野逸美さん。この3人の方はどういう集まりだったんですか? 松任谷:最初はサックスの香織ちゃんに助けてもらって、香織ちゃんが連れてきたのがひかりちゃんで、ひかりちゃんが連れてきたのが逸美ちゃんでっていう3人。 小原:僕のリクエストは男はやだよっていう(笑)。 田家:それがあったんですね(笑)。 松任谷:不良です(笑)。 田家:あ、なるほどね。彼女たちもそういう意味ではSKYEのトーンにとってもマッチしている感じがしますね。 松任谷:1枚目のアルバムのときから助けてもらっていたから、バーって高い音とかはさすがに女の子だから苦手だけど、それも僕らの力が抜けているところとちょうどマッチするかなぐらいな。そんな難しい譜面を書かなければ大丈夫なので。 田家:そういう意味のバンドのアルバムでもあります。