人手不足倒産、過去最多ペース 「2024年問題」が直撃、物流業では倍増近くに
建設・物流業が全体の約4割、小規模事業者で多数
人手不足による企業経営への影響が、一段と深刻化している。従業員の退職や採用難、人件費高騰などを原因とする「人手不足倒産」は、2024年上半期(1-6月)に182件発生。年間として、過去最多を大幅に上回るペースで推移している。 2024年4月より、運転業務や建設業務の時間外労働に上限規制が適用されたことで労働力が不足する、いわゆる「2024年問題」の影響から建設業は53件、物流業は27件と年上半期としてはそれぞれ過去最多だった。また、「従業員10人未満」の企業が全体の約8割を占める。就業者数の増加が続き人手不足はやや落ち着きをみせているものの、人手不足感は依然高水準で推移していることから、今後も小規模事業者を中心に倒産に追い込まれるケースが増加する可能性がある。
人手不足は緩和傾向、一方で1人の退職が大打撃となる小規模事業者は今後も苦境
2024年上半期(1-6月)の人手不足倒産は182件に達し、前年同期の110件から大幅に増加した。統計として遡れる2013年以降の最多件数を2期連続で更新するなど、深刻な現状が浮き彫りとなった。特に「従業員10人未満」の小規模事業者の人手不足倒産は全体(182件)の約8割にあたる143件(前年同期84件)にのぼった。 今年5月の労働力調査(厚生労働省)によると、就業者数は6766万人となり22カ月連続で前年同月を上回り増加傾向が続くなど、足元では人手不足感は高水準ながらも低下に転じる兆しがみえる。一方で、転職等希望者は1000万人を超え過去最多を更新するなど、労働市場の流動化が加速している。従業員数の少ない小規模事業者では、退職者が出ればダメージは大きく、事業継続の断念につながるケースが増えそうだ。
物流業の人手不足倒産は前年同期比で倍増近く、バリューチェーン全体への影響に懸念
時間外労働の上限規制が強化された、いわゆる「2024年問題」が本格化してから、3カ月が経過した。建設業・物流業では既に人手不足による倒産の増加が顕著となっている。人手が増やせず業務効率化も難しい状況が長期化すれば業績への影響は避けられず、企業にとっては大きな痛手となり、生き残りは難しい局面を迎えることになるだろう。 特にトラックドライバーの時間外労働上限規制や改善基準告示が改正された物流業の人手不足倒産は27件で、前年同期(15件)からほぼ倍増だった。多くの産業が関わるバリューチェーンのなかで基盤となる物流業に支障が生じれば、対応に追われる必要性も増してくる。実際に、2024年問題に際して物流面の対応を行う企業は62.7%にのぼった 。具体的な対応策も多岐にわたり、運送費の値上げ(受け入れ)やスケジュールの見直しなどが上位となっている。自社の人手不足に関してだけでなく、企業を取り巻くあらゆるステークホルダーの状況把握にも注意が必要だ。