4人に1人の若者が「家に居場所がない」。''寄り添わない''支援で生き抜くための手札を #豊かな未来を創る人
── 掲示板という形にしたのは、なぜですか。 私自身つらかったとき、当時のTwitterでフォロワー0人の鍵アカウントを作って、悩みを吐き出していたんです。そうしたら、ちょっと心が楽になって。そのとき誰かに共感してもらえていたら、もっと嬉しかっただろうなと。それで、同じような悩みを持った子どもたちが、大人にお説教されることなく安心して本音をつぶやける場を作ることにしたんです。 実際にリリースしてみると、想像以上にたくさんの声が集まり、ニーズがあることを実感しました。もっと力を入れてやっていかなくては。そんな思いと同時に、この活動が社会できちんと認められるのかという不安もあったんです。家庭環境の問題というのは、「自己責任」のような言葉で片づけられてしまうこともある分野だと思っていたので。 そんな中で挑んだのがグッドデザイン・ニューホープ賞でした。そこでサービスが社会に評価されるのであれば、続けていこうと。そんな思いで、選考に挑んだのです。その結果、無事第3の家族のサービスが最優秀賞を獲得。実社会に展開していく上での、有意義な仕組みとして評価をしてもらうことができました。 そこから本格的に取り組む覚悟が決まったのです。大学卒業後、企業デザイナーとして働きながら、第3の家族をNPO法人化することに。活動を続ける中で、次第に投資・協働してくれるパートナー組織が見つかったり、大手企業の社会起業家育成プログラムに採択してもらったり、資金や体制が整ってきました。それで2023年9月に、新卒から勤めた企業を退職。現在は28人のメンバーとともに取り組んでいます。
大人への嫌悪感をずっと覚えていたい
── ここまでの取り組みについて、どのような手ごたえを感じていますか。 これまで、年に数回のオフラインイベントを除けば、基本的に私たちはオンラインを中心とした、いわば半無人的な支援を行ってきました。その支援の在り方に、まずは一定の手ごたえを感じています。 というのも、やはり従来の電話相談などの対人支援では、親身に話せる一方で、人手と時間が必要なぶん、支援できる人数は限られてくる。取りこぼしてしまう若者たちがいる現実もあったのです。これに対して、半無人的な支援であれば、より多くの若者を支えるための、大きな循環を作っていけるのではと感じています。 ── その上で今後力を入れていきたいことは? 一つ目は、一人ひとりに対して、さらにきめ細やかな支援ができるシステムの構築です。具体的には、機械学習の仕組みを取り入れたい。ユーザーのデータをもっと活用して、個人の悩みに応じてパーソナライズ化された情報を、適切なタイミングで提供していきたいと考えています。 例えば「gedokun」で、緊急を要するような投稿が見られたら子どもシェルターなどの避難先があること、近くに支えてくれる人が必要そうであればNPOなどの居場所があることなど、一人ひとりに合った情報を必要なときに提示していくことで、さらに役立つ支援ができたらと考えています。 二つ目は、先ほどお話した、傷ついていることを自覚していない若者たちに、さらにリーチしていくことです。そのためのフックとしては、やはり表現コンテンツを積極的に活用していきたいです。 例えばボカロ(ボーカロイド)や、歌手Adoさんの「うっせぇわ」のような曲は、具体的な社会課題について啓蒙するわけではないけれど、若者の生きづらさを歌っていて共感性が高い。そうした日常に溶け込みやすいコンテンツが、少年少女にリーチするためには必要です。今後はSNSのリール動画も活用しながら、どうすれば若年層にメッセージが届けられるのか検証していきたいです。